中山:うん、だいたい頭の中にあるのは、ほぼ仕事のこと……小説のことしか考えてないから、街歩いてたら「ああ、ここには防犯カメラがないから、ここの道に人を連れ込んだら殺せるな」とか。そういうトリックのことばっかり。歩きながらどうやったら人を殺せるか、そればっかり考えてる。
新井:こわーい。
中山:だから、物書きじゃなかったら、単に危ないおっさん。
新井:次の質問です。中山さんが尊敬している作家、またその逆がございましたら教えてください。
中山:逆もですか? えーと、尊敬しているのは、やっぱり小説家では島田荘司さん。でもやっぱり、その前に手塚治虫というすごい巨木があって。僕のストーリーの作り方って、手塚治虫さんの『漫画の描き方』っていう本にほぼ準拠しています。漫画の描き方といいながら、すべての創作物の基本みたいなことが全部書いてあって、隠れたベストセラーだと思います。というか、それを読んで物書きになれなかったり、漫画家になれなかったとしたら、もうあきらめたほうがいいっていうくらい。ともかく、手塚さんはすごい。何がすごいのかっていうと、例えば、ロボットという名前を聞いて、日本人はすぐ二足歩行思いつくでしょ。でも海外の人ってかならず、工業用ロボットしか思いつかないの。それは、日本にはアトムがあるから。それに悪い医者って言ったら、みんなブラックジャックしか思いつかないでしょ。だから、今の話の逆になるけど、嫌いな作家っていうと、やっぱり「黒い医者」というとブラックジャックがあるのに、いまさらまたね、そういう黒い医者とかを出すのは、好きだから出すのはわかるけど、それは二番煎じとか三番煎じだからやめろって思っちゃう。嫌いだなというか、この人はだめだなっていうのは、そういう元ネタがすぐわかる人間をその設定にもってくる人。それは、あからさまに素人。それを商業ベースに載せようっていうのがおこがましい。と思う。んで、こんなことをいうと、また刺される(笑)。
新井:次の質問いきましょうか。執筆をされる際のモチベーションはなんでしょうか。
中山:ああ、これは、モチベーションというかどうかですが、必ず出版社に利益をもたらすようにしようと思っています。なぜかっていうと、新人がでるでしょ? じゃあなんで新人が本を出せるかっていうと、その先輩方が出版社に利益をもたらしてるから、本を出せるんですよ。あの、どんな世界でも新人というのは、その世界の宝でしょ? でもその宝も、経済的なバックボーンがなかったら、デビューさせられないんですよ。だから、少なくとも利益を出せるようにして、少しでもプラス材料になるような物書きになりたいなと思ってます。
新井:うんうん。
中山:だってこれ、一応仕事だから、マイナスをね、もたらすようなものにはなりたくないなと。だから、出版社に損をさせるようになったら、もうやめようと思っています。
(2018年8月31日@三省堂神保町本店)