他の女子受験生からは、「将来、長く勤務できることを考えて、医師を目指して、医学部を受験している」と言った声や、「結婚や出産をしたらやめようなどと思っていたら、浪人してまで勉強しない」と言った切実な声も聞かれました。

 一方、現場で働く医師の中でも、女子受験生の一律減点に対して、必要な措置または良いことではないが必要悪だと思うという意見と、理解できないという意見が共に存在し、医師の間でも意見の隔たりがあることが現状のようです。

 OECDのHealth at a Glance2015のデータによると、世界の女性医師の割合は、OECD平均で45%です。オランダが50%、スウェーデンが47%、ドイツが45%、米国が34%であるのに対して、なんと日本は20%と最下位。2016年12月、女性内科医が担当した入院患者は、死亡率や再入院率が低かったという調査結果がJAMA Internal Medicineに掲載された一方で、出産や育児によって勤務を制限せざるを得ない女性医師が、排除の対象となってしまい、女性医師の割合が世界的に見ても明らかに少ないのが日本の医療界の現状です。

 私には、単なる女性差別問題であるとは思えないのです。根本の要因として、日本全体における医師不足が挙げられます。

 専門医制度を利用した若手医師の大学病院への囲い込みも要因の一つでしょう。若手に「専門医」という肩書きをチラつかせ、医局員として安い報酬で働かせるこの制度。専門医制度が今年より新制度に変わり、大都市に若手医師が集中してしまいました。昨年度に比べ大幅に若手医師が減ってしまった地方では、現場で最も働いてくれる医師がいなくなり、しわ寄せがくることは容易に想像がつきます。

 しわ寄せは、現場の医師に実質的な負担増として降りかかります。男性医師はもちろんですが、現役で働く女性医師にも負担は当然かかってきます。女性だけでなく男性医師も疲弊します。実際に、病院勤務をやめてクリニック勤務や開業することを選択した先輩の男性医師の話を聞いたことが何度もあります。

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女性医師はみな眼科を目指す? いやいや…