こうしたしわ寄せが、出産や育児で勤務を制限せざるを得ない女性医師のせいだとされているに過ぎないのではないでしょうか。

 いやいや、女性医師が多くなると、皮膚科や眼科などに集中して、外科志望の医師が減ってしまうから困るでしょ、という意見や、女性は重い人を持てない、体力もないから整形外科や外科は性別的に向いていないわ、という意見もあります。

 本当にそうなるのでしょうか。多くの女性医師が例えば皮膚科を希望したとしたら、それなら私は他の科にしよう、と考える医師が出てくるのは自然ではないでしょうか。医師も食っていかないといけないのですから。

 実際に、東京医大の内科系診療のスタッフに占める女性医師の割合は、ホームページによると、後期研修で37%、助教以上のスタッフが23%、准教授・教授で5%であり、決して内科系を女性医師が避けているわけでもないことがわかります。

 また、病院で働くスタッフは医師だけではありません。看護師さん、技師さん、事務の方など多くのスタッフが働いています。患者さんのケアをするのは、基本的に看護師さんであり、男性もいないわけではないですが、圧倒的に女性が多いのが現状です。看護師さんは、患者さんの体位変更、清拭や洗髪、ベッドから車椅子への移動など、毎日行なっています。重い人を女性が持てない、なんてことはないと思うのです。

 今回の問題をきっかけに、出産や育児で勤務を制限せざるを得ない女性医師のせいにして、医学教育を受ける機会をフェアに与えるべき入学試験が、大学病院で将来勤務してくれる医師確保のための試験となっている現状が解決されることを願っています。

◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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