三浦:連載していたのは、2002年ぐらいからかな。本は2004年ですね。

馬場:そうやって考えると要所要所に三浦さんの本読んだり、一緒に街歩いたりして、結構影響受けているのかな。

三浦:いやいや、私が馬場君に影響されているんで。そういえばファスト風土論を書く時にバスジャック事件の現場を見るために佐賀(馬場さんの地元)に行って、馬場くんの下宿していた家はこれですかって写メしたね(笑)。それで佐賀市内のすさみ方がすごかったんで、馬場君にもその次の『脱ファスト風土宣言』で佐賀のことを書いてもらった。

馬場:あのころは地元には近づかないようにしていたんですよ。佐賀に関してはどうしていいかわからないから。デザインとか建築で何かできる気がしなかった。でも原稿を依頼されて、自分の街を見つめなおすきっかけをもらったというか。それで今、佐賀をあの状況からどう救うかという仕事をたくさんしていますよ。

三浦:建築家の西村浩さんとやっている佐賀市の再生は素晴らしいですね。

馬場:こうして振りかえると、三浦さんと街を歩いたことがもしかすると何か僕の次のアクションの導火線になっていたかもなあと思います。ファスト風土論の時に考えたことも、今、いろんな地方都市でやっている仕事の思考のきっかけになっているような気もしてきたし。「ヤバいビル」もきっとそうですね。次の時代は何が待っているのか。また先に教えてください(笑)。

※2018年4月28日 於:御茶ノ水山の上ホテル

(構成/三浦展)

馬場正尊(ばば・まさたか)/オープンA代表取締役・建築家・東北芸術工科大学教授。1968年佐賀県生まれ。1994年早稲田大学大学院建築学科修了。博報堂、早稲田大学博士課程、雑誌『A』編集長を経て、2003年オープンAを設立。2003年から「東京R不動産」を運営、人気となり全国各地のR不動産ができる。建築設計を基軸にしながら、公共空間づくりなど幅広い活動を行っている。著書に『公共R不動産のプロジェクトスタディ』『エリアリノベーション』『都市をリノベーション』など多数。

三浦展(みうら・あつし)/社会デザイン研究者。1958年生まれ。82年 一橋大学社会学部卒業。(株)パルコに入社し86年同誌編集長。90年三菱総合研究所入社。99年「カルチャースタディーズ研究所」設立。消費社会、都市、郊外などの研究を踏まえ、時代を予測し、社会デザインを提案している。著書に『下流社会』『第四の消費』『吉祥寺スタイル』『高円寺東京新女子街』『東京田園モダン』『新東京風景論』『ファスト風土化する日本』『東京高級住宅地探訪』『東京郊外の生存競争が始まった!』など多数。