1イニングで4アウトに5アウト…夏の甲子園、“誤解”から生まれた珍事 (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

1イニングで4アウトに5アウト…夏の甲子園、“誤解”から生まれた珍事

このエントリーをはてなブックマークに追加
久保田龍雄dot.
1982年の益田vs帯広農。思わぬ出来事が起きた (c)朝日新聞社

1982年の益田vs帯広農。思わぬ出来事が起きた (c)朝日新聞社

 1イニング4アウトから31年後、2013年の準々決勝、富山第一vs延岡学園では、さらに上をいく1イニング5アウトの珍事が起きた。

 4対4の9回表、富山第一は寺崎光、宮本幸治の連打で無死一、三塁と勝ち越しのチャンス。

 1死後、延岡学園は横瀬貴広に代わって、奈須怜斗がリリーフ登板し、次打者・西田悠貴を二ゴロ併殺に打ち取った。

 これでスリーアウトチェンジと思われたが、実は、このプレーのとき、三塁側延岡学園のブルペンで投球練習中だった石川泰士の暴投したボールが左翼フェンスゾーンに転がったため、線審がタイムをかけている最中だった。

 球審が気づかなかったことからプレーが続行されてしまったのだが、富山第一側からの抗議を受けて、併殺はノープレー。1死一、三塁から仕切り直しとなった。

 「瞬間は気持ちが落ちた」という奈須だが、「それなら三振を狙ってやろう」とすぐに気持ちを切り替え、2者連続三振で今度は本当のチェンジ。ノープレーになった併殺も含めると、1イニングで5つのアウトを取ったことになる。

 この場面で一番ホッとしたのは、ブルペンで暴投し、やり直しの原因をつくった石川。連続三振でピンチを切り抜けた奈須がベンチに引き揚げてくると、「すみません」と平謝りだった。

 スコアボードのカウント表示が更新されなかったことから、2ストライクなのに守っている側が三振と勘違いするハプニングを招いたのが、2012年の1回戦、札幌第一vs佐世保実。

 珍事が起きたのは5回表だった。3番・山田祐聖の右前タイムリーで2対2の同点に追いついた札幌第一は、4番・村田皓大がカウント1-2からスリーバント失敗で2死となったが、次打者・高橋雄一が打席に入っても、スコアボードのカウント表示は更新されず、1-2のまま。これが大きな誤解のもととなった。

 カウント1-1の高橋に対し、佐世保実の左腕・木村隆志の3球目はストライク。この時点でまだ2ストライクなのだが、スコアボードの「1-2」の誤表示を高橋のカウントと勘違いした佐世保実ナインは、三振でスリーアウトチェンジと思い込み、ベンチに引き揚げようとした。

 直後、札幌第一ベンチから、ヘルメットを脱ぎかけた一塁走者・山田に対し、「走れ!」の指示が飛ぶ。山田は三塁まで進んだが、ここで長谷川次郎球審が野球規則5.10(突発事故によりプレーヤーがプレイできなくなるかあるいは審判員がその職務を果たせなくなった場合)に則り、ボールデッドを宣告して試合を止めた。

 ストップさえかからなければ、一気に勝ち越しのホームを踏むこともできたとあって、札幌第一・菊池雄人監督は「審判がインプレーをボールデッドにできるのか?」とルールの適用について説明を求めた。

 一方、「2ストライクと思ったが、(打者が)戻ってきたので、自分が間違えたと思った」という佐世保実・清水央彦監督は、走者一塁での試合再開を主張。スコアボードの誤表示をめぐって、事態はもつれにもつれた。

 審判団の協議の結果、2死三塁で試合再開となり、山田の三進は盗塁と野選(守備側の無関心)が記録された。

 再び打席に立った高橋は、木村の4球目を空振りし、今度は正真正銘の三振に倒れた。

 試合後、審判規則委員会の木嶋一黄技術顧問は「(表示の)ランプが正しくなるまで(試合を)止めるべきだった」として、現場の不手際を謝罪した。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。


トップにもどる dot.オリジナル記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい