“ふつう”の主婦が一転、ひきこもりに。自分でも気が付かないあいだに苦しさを溜め込んでいた理由とは(※写真はイメージ)
“ふつう”の主婦が一転、ひきこもりに。自分でも気が付かないあいだに苦しさを溜め込んでいた理由とは(※写真はイメージ)

「家事手伝い」「主婦」という肩書きがあるがゆえ、内閣府の統計から漏れていた女性のひきこもり。その実態が、当事者団体である「ひきこもりUX会議」の調査で明らかになった。回答した143人の女性うち、既婚者は4人に1人。中でも、専業主婦(配偶者と同居し、収入がない人)がひきこもるようになった原因は、コミュニケーション不安(81%)、精神的な不調や病気(75%)、家族以外の人間関係(66%)だった。

【調査結果】夫以外の接し方がわからない…“既婚女性”のひきこもり実態

 マキコさん(仮名、50歳)もひきこもり主婦の一人。高校卒業後に就職し、職場で出会った男性と29歳のときに結婚。趣味があり、持ち家に住む “ふつう”の生活が一転したのは4年前だった。孤立、認められたい……彼女が夫にさえも言えなかった思いとは。不登校新聞の編集長、石井志昂さんが聞いた。

*  *  *

――マキコさんがひきこもり始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

 風邪をひいたのがきっかけでした。

――えっ!? 風邪ですか?

 直接のきっかけとしては風邪だと思います。

 ただ、いつもの風邪とちがったのは鼻づまりがひどかったことです。経験したことがないような鼻づまりで息をするのも苦しく、眠れなかったんです。

 お医者さんからは「後鼻漏(こうびろう)になっているが、そのうちに治る」と。でも完治する前に鼻で炎症が起きてしまい、1カ月ほど、匂いを感じることができなくなりました。シャンプーやコーヒーの匂いさえわからず、食べている物が腐っているのかもわからない。もともと匂いに敏感なほうだったので、最初にパニックになってしまったのが、このときです。

 お医者さんに、もう一度、症状を訴えると今度は強めのお薬が処方されました。その薬の影響なのか、今度はなにを食べてもすごくしょっぱい。味覚がおかしくなってしまったんです。

 風邪だったのが、それがこじれてしまって、日々、眠れないし食べられない。1カ月間に5キロ以上も痩せてしまい、このまま死ぬんじゃないか、とだんだんと精神的にも追い詰められていきました。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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ふつうから一転「人生終わってしまった」