平昌五輪で連覇を果たした羽生結弦 (c)朝日新聞社
平昌五輪で連覇を果たした羽生結弦 (c)朝日新聞社

 フィギュアスケートのルールは、これまでも五輪後のタイミングで変更されてきた。平昌五輪後も例外ではなく、今年6月に開かれた国際スケート連盟の総会でルールの大幅な改正が決定された。特に男子にとっては、競技の方向性にもかかわる大きな変化がある。今回はそのルール変更が、羽生結弦、宇野昌磨ら日本人選手に及ぼす影響を検証してみたい。

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 まず、大きな変更点としてはジャンプ偏重の傾向を修正する方向に採点が是正されたことだ。ここ数年、男子では4回転ジャンプの種類・本数が爆発的に増え、世界トップクラスのスケーターは複数の4回転を跳ぶことが当たり前になった。しかし、演技の重点が高難度のジャンプに偏りすぎる傾向もあったといえる。今回の改正はその流れを変えようとするもので、今までは「繰り返し跳べる3回転以上のジャンプは2種類まで」とされていた規定を来季から「繰り返し跳べる4回転は1種類のみ」と変更している。さらに、昨季まで4分半だったフリーの演技時間を、女子と同じ4分に短縮。フリーのジャンプの数も、8本から7本に減らしている。

 そして、もうひとつ重要なのは、要素の質を評価する出来栄え点(GOE)の変更だ。昨季までは-3~+3の7段階評価だったが、今季からは-5~+5の11段階評価になった。そして、ジャンプの基礎点は全体的に下げられている。おおまかにいえば、完璧ではなくても4回転ジャンプをとにかく多く跳んで得点をあげる戦術が通用しづらくなり、3回転ジャンプでもきれいに跳ぶことで出来栄え点を獲得する方法が有効になるといえる。

 また、新ルールではコレオシークエンスの得点があがっている。ジャンプ偏重とならないよう、表現やスケーティングもきちんと評価する方向性が現れているのだ。フィギュアスケートのあるべき姿を示すメッセージとも受け止められる。

 平昌五輪で連覇を果たした羽生は、他の追随を許さないGOEの高さが強みだ。平昌五輪のフリーで最初に跳んだ2本の4回転のGOEは、最高の3だった。また羽生のトリプルアクセルは圧倒的な美しさがあり、GOEの幅が広がれば広がるだけ、その中での最高点を獲得するのではないかと思われる。質が問われる新ルールでは、ジャンプだけでなく、すべての要素の完成度が高い羽生は高い得点を得るのではないだろうか。

 今年5月、これから新ルールが決まるという段階で、羽生は次のように語っている。

「僕は、どんなルールにおいても『フィギュアスケートが好き』という気持ちは変わらない。やはりフィギュアスケートをやっていて、勝負の世界にいる中では『勝ちたい、トップに立ちたい』という気持ちがあるので、どんなルールであれ自分が適応し、その中で勝てる自信をつけながら練習していきたい」

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宇野昌磨ら他の選手への影響は?