この変則日程と160キロをマークして以来、県内外から取材が殺到したことが微妙に影響したのか、決勝戦のマウンドに上がった大谷は序盤低めの制球に苦しみ、2回2死から8番・千葉俊の左前タイムリーで1点を先行される。3回にも安打の走者2人を一、二塁に置いて、4番・二橋大地に外角やや高めの148キロ直球をとらえられ、打球はレフトポール際へ。微妙な弾道に対し、付近にいた観客は「ファウル!」のジェスチャーを見せたが、三塁塁審の判定は「ホームラン!」

 直後、判定をめぐり、試合は中断。花巻東側は「三塁塁審はフェアゾーンから打球を見ていた。球審のジャッジはどうか?」「審判4人全員で話し合ってほしい」などと3度にわたって要望したが、判定は覆らなかった。

 序盤の4点が重くのしかかった花巻東は、5回にようやく1点を返し、1対5の9回にも4番・大谷の右前タイムリーなどで2点を挙げたが、なおも2死三塁のチャンスを生かせず、3対5で試合終了。“打倒大谷”を合言葉に至近距離から速いボールを打つ特訓を積んできた盛岡大付の執念の前に屈した。

 三塁走者として最後の夏が終わった大谷は「岩手の方に日本一をとって喜んでもらいたかったが、挑戦できずに終わってしまったのが悔しい」と声を詰まらせた。

 佐々木洋監督は敗因について「あれ(ホームラン判定)がすべてではない」と語ったが、スコア的には、まさに明暗を分けた3ランだった。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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