「検索エンジンが共起語や文脈を把握できる水準にないと判断できる根拠は実際に対策をしてデータをとるのが1番ですが、簡単に確認できるものも多く、1例として、Googleが提供している翻訳ツール『Google翻訳』での事象が挙げられます。試しに適当な文章を日本語から英語に翻訳し、翻訳された英語を日本語に再度翻訳してみてください。最近はかなり精度が向上してきたので短文なら問題ないこともありますが、そこそこ長文になってくると、元に戻したときの日本語はたいてい意味がわからないものになるはずです。Google翻訳で文章がおかしくなるタイミングは、『元の言語の文意を把握する際』と、その『文意を反映した文章を翻訳する言語で作成する際』の2回あります。そして、複数のデータを確認すると、文意が把握できており、共起語というものが機能しているのなら起き得ない翻訳ミスが数多く見られるのです」

 鈴木さんがこのように情報の検証を重視する背景には、日本では検索エンジンの「最新」施策が導入されにくいことがあるという。それは日本語という主に日本でしか使用されない言語の特殊性によるもので、アメリカにおいて英語で実施された施策は、日本に導入されるまでに相当の時間がかかってしまう場合があるという。

「そもそもアルファベットは26文字ですが、日本語は平仮名と片仮名だけで96文字(濁音、半濁音、撥音を含めると169文字)あり、常用漢字だけでも2136文字・4388音訓(2352音・2036訓)あるので、利用される文字数が圧倒的に違います。そして、単語ごとにスペースで区切られる英語などの言語と異なり、日本語は隙間なく単語が続く上に、漢字や平仮名、片仮名などが入り乱れるため、単語を把握するのも圧倒的にたいへんです。加えて、日本語の文章は英語の『SV(主語+動詞)』や『SVO(主語+動詞+目的語)』『SVOO(主語+動詞+目的語+目的語)』のような文型がなく、接続詞や接続助詞によってどこまでも長くなるため、文型から内容を把握することも困難です」

 結論として、アメリカで実施したGoogleの施策(発表)を日本に導入するには、技術的に大きなハードルを越えなければならないのだ。

「それに加え、日本は世界第3位の経済大国ではありますが、日本語はほぼ日本でしか利用されないので、言語としての市場の発展性がありません。たとえば、スペイン語に対応すれば中南米に、フランス語に対応すればアフリカに波及することができますが、非常に高い技術的なハードルを越えても、日本語では、効果が日本だけにとどまってしまうのです」

 日本語はSEO業界にとって後進国であり続ける宿命があるにもかかわらず、検索エンジン大手のGoogleやYahoo!、Bingなどがアメリカの企業であり、多くの施策がアメリカから導入されていくので、日本のSEO業界はアメリカの動向を気にしてしまう。そして、多くの「SEOの専門家」が得た情報を検証せずにそのまま利用しているため、現実と相違したさまざまな問題が起きてしまうのだ。

●「文脈」と「共起語」では効果を出せない!?

「たとえば、Googleで『一戸建て』と『一戸建』というキーワードを検索してみてください。ほんの少し表記が異なるだけですが、検索結果に表示されるWebサイトの数も、その順位も異なることが確認できます。どちらの表記でも検索する人は同じものを検索しているので、Googleが『一戸建て』と『一戸建』を同じ意味の単語であると判断できているのなら、同一の検索結果を出すでしょう。しかし、(徐々に改善されてきてはいますが)この検索結果に表示されるWebページ数は、2014年の時点で送り仮名のあるものはないものの約55倍もの件数が表示され、2017年の時点で10倍弱、2018年の2月時点でも3倍強の違いがあり、検索結果に表示されるサイトもほとんどが異なります」

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どうやって対策すればいいのか?