向井理には「男らしくない男」が似合うわけ

あの人ってば。

矢部万紀子

2018/07/23 11:30

 対する「そろばん侍」の市兵衛。水木のような軽みはないのだが、かわりに正義感も腕っ節も強い。そして優しさは、水木と同じだけある。

 このドラマ、3回ごとにお話が完結する。最初の3回では旗本・高松家に雇われる。雇い主は、当主である夫を亡くした安曇(村川絵梨)。次の3回の雇い主は呉服問屋・磐栄屋の主人の娘お絹(小芝風花)。最後の3回は醤油問屋・広国屋の主人の従姉妹・美早(前田亜季)。そう、全員女性なのだ。

 広国屋に雇われる際の口入屋のシーンが象徴的だった。店の主人から「雇い主は広国屋の本家から来ている手伝いの人だ」と説明がある。給金が安いと断る人が続出する中、市兵衛が引き受けたところで美早が入ってくる。

「本家から来ている手伝いって、女か」

 そうあからさまに言う侍がいる。市兵衛は美早を見て会釈、ほんの少しだけ微笑む。

 その穏やかな笑みで、市兵衛は偏見のない人なのだとわかった。江戸の侍にありながら、お侍然としていない。「女か」とは言わない。そういう意味での「男らしくない男」、そこが向井にハマった。

 広国屋にはびこる悪に、分け入っていく市兵衛。首謀者は大番頭。中で唯一、悪事を拒もうとした圭助という使用人が、事故に見せかけて殺されたことを知る。

 美早と共に圭助の実家(中目黒村にある農家なのだが)を訪ねる市兵衛。ここからのシーンに泣いたので、縷々書いていく。

 そこには圭助の兄・半助と盲目の母・とめがいる。半助が弟は正月に帰ったきりになってしまったが、事故ならそれが運命だったろう、と語る。正月に会った時は疲れた様子で「出世するばかりが偉いわけじゃねえ。商いにはいろいろ難しいところがあって、たやすくない」と言っていたと振り返る。

 そこにとめが入ってくる。葬式に来てくれた美早を、広国屋のおかみと勘違いしている。「こんなお優しいおかみさんに泣いて惜しまれた息子は、大したもんだと思った次第です」と礼を言う。

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