ハリセンボンの近藤春菜 (c)朝日新聞社
ハリセンボンの近藤春菜 (c)朝日新聞社

 メディアの調査・分析を行うニホンモニター株式会社から2018年1~6月のテレビ番組出演者データをもとにした「2018上半期タレント番組出演本数ランキング」が発表された。1位に輝いたのは、TBSの朝の情報番組『ビビット』でMCを務めるTOKIOの国分太一だった。

 このランキングで上位に名を連ねているのはほとんどが芸人である。ベスト20の中で芸人以外のタレントはたった5人しかいない。朝・昼の情報番組で芸人がMCを務めることも珍しくない時代になり、テレビにおける芸人の存在感は年々強まっている。

 上位に入った芸人の顔ぶれを見てみると、コンビの中で「ツッコミ」を担当している芸人の割合が多い、ということに気付かされる。設楽統(バナナマン)、近藤春菜(ハリセンボン)、博多大吉(博多華丸・大吉)、上田晋也(くりぃむしちゅー)など、上位はツッコミ芸人ばかりで占められている。カズレーザー(メイプル超合金)、春日俊彰(オードリー)などのボケ芸人もランクインしているが、割合としては少ない。なぜここまで偏りが出るのだろうか。

 その理由の1つは、ツッコミを担当する芸人がMCを務めることが多いからだ。お笑いコンビがテレビに出る場合、ボケ担当はふざけたことを言って笑いを取ることを求められる。一方、ツッコミ担当は常識の側に立って、それをたしなめるようにして番組を進行する役割を与えられることが多い。その結果、MCを任される芸人はツッコミ担当ばかりになっていく。

 そもそもお笑いライブの世界でも「コンビの間ではツッコミ担当が仕切り役を務める」という暗黙の了解のようなものがあり、ほとんどのコンビがそれに従っているため、自然にそれが定着していくのだろう。

 また、MC以外でも、テレビではツッコミ芸人が求められる場面は多い。その典型がリアクション系の企画である。一昔前まではリアクション芸はボケ担当の仕事だと思われていた。だが、最近はその状況も変わりつつある。小峠英二(バイきんぐ)、澤部佑(ハライチ)、小宮浩信(三四郎)などはバラエティのドッキリ企画の常連である。彼らはいずれもツッコミ担当ではあるが、ドッキリでひどい目に遭わされたときのリアクションの面白さを評価されてきた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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