そうした囁きに負けることはないのでしょうか?

「ない……とは言えない(笑)。でも、やる気なんて元々なくて当たり前。だからモチベーションが低い状態を基準にしてやり方を考えていかないと、いずれ苦しくなると思いますよ」

「明日やる」「やればできる」――。山里さんは、そうした“意志の力”を信じていない。自分がどれだけ弱い人間かを痛いほど理解しているからだ。だから「自分を肯定する言い訳」ではなく、「面倒くさいことから自分を逃がさないための言い訳」をいくつも考える。

「僕の原動力は、他人に対する「怒り」と「嫉妬」。サボりたくなったときは『ネタを考えずに寝てるから、あのときあんな嫌な思いをしたんだろ!』って、実際に声に出して布団から出る。それで机の前に5分座っていられたら僕の勝ち。さらに会話の切り返しの1、2個やアンケートの回答が書けたら、もう最高の気分」

 こうしたストイックさも、自分が天才じゃないと自覚しているからこそ。これ以上ダメにならないためのルールづくりや環境づくりに余念がない。

『天才はあきらめた』のラストに、こんな一文がある。

<やっぱり僕は天才になれない。でも、この事実をあきらめる材料にするのではなく、目的のために受け入れ、他人の思いを感じて正しい努力ができたとき、憧れの天才になれるチャンスがもらえる>

 でも、やっぱり、たまにはサボりたいし、眠たくなってしまうのですが……。

「寝たいときに真面目な作業をやるから余計に眠くなるんですよ。そういうときは嫌なやつの悪口をノートに書けばいいんです。3人ぐらい書いてると、怒りのパワーで血圧が上がって目がパッチリするのでオススメですよ!」

(取材・文/澤田憲)