江川:それはうそですよ。まず私の球はバットの芯には絶対当たらないから。だからそれはあくまでも伝説ですね。

高木:江川さんと対戦した人に話を聞くと、みんな「投げた瞬間にキャッチャーのミットに球が入っていた」と言いますからね。

江川:それはプロの時ですね。

高木:プロに行く前に大学の話も聞きたい。1973年のドラフトで阪急ブレーブス(現・オリックスバファローズ)から1位指名を受けましたが、それを断ったのはなぜですか?

江川:進学です。

高木:本当ですか? じゃあ巨人から指名されていたらどうでしたか?

江川:進学です。

高木:でも早慶って言っていたけど、実際は法政大学に進学しましたよね。

江川:落ちたから仕方ないですよ。

高木:江川さんの口から言えないと思うけど、やっぱり大学には「江川を入れたら裏口じゃないかと言われる」という心配があったと思いますよ。

江川:まあこれは詳しく話せないんですよ。80歳くらいになったら話すかも。

高木:わかりました(笑)。次にいきましょう。やっぱり“空白の一日”についても聞きたいです。当時は大変だったでしょう。記者会見で記者に対して「興奮しないで!」とか言っていましたよね。

江川:あれには理由があったんです。巨人との契約についての記者会見をセッティングしていた時に、いきなり記者の方がどなりはじめたんです。「ふざけたことしてんじゃねえ!」って。それで「興奮しないでください」と言ったら、そこからカメラを回されてしまった。いきなり記者に対して言ったように映ってしまったから印象が悪くなった。

高木:巨人はやっぱり入りたい球団だったんですか?

江川:クラウンライターライオンズ(現・埼玉西武ライオンズ)から指名を受けて、そのときは親戚から反対されました。みんな商売をしていましたから。

高木:やっぱり巨人を敵にしたチームに入ると商売的に困っちゃうんですよね。そんな時代でした。

江川:そう。だからお断りをした。親戚がみんな父親のとこに来て「やめさせてくれ」って言ったんだから仕方がない。

次のページ