高木:球を捕れないキャッチャーもいたんじゃないですか?

江川:そうですね。捕れない人もいました。

高木:それで、進学校はあきらめて作新学院に入学することに……。

江川:違う違う違う。あきらめたんじゃなくて、作新学院高校でも私は大学受験クラスに入学しました。

高木:そこはいいじゃないですか……。

江川:大事なことですよ。早慶希望は変わっていませんから。

高木:で、そのクラスに入って……。

江川:スポーツ選手として、そのクラスに入ったのは私が初めて。

高木:わかりましたよ……。それで高1からエースになって、高校時代の成績は本当にすごいですよね。

江川:最もすごかったのは高2の夏の県予選。1試合目がノーヒットノーラン、2試合目が完全試合、3試合目がノーヒットノーラン、そして準決勝は10回2死までノーヒットノーランでしたが、結局0-1で負けました。

高木:それは本当にすごい。野球の試合って1試合27個のアウトを取れば終わりじゃないですか。27三振を狙ったことはありますか?

江川:あります。

高木:何個くらいまでいきました?

江川:確か23個か24個しか取っていないですよ。

高木:「しか」じゃないでしょう。謙虚なふりして上からなんだよね。

江川:事実を話しているだけですから。事実を話したらそういう批判を浴びるという。よく誤解されるんですよ。

高木:とにかく当時の江川さんは子どもに見えませんでしたよ。相手はバットをふた握りくらい短くもって、当てるのが精いっぱいという感じだった。

江川:球は速かったからね。相手は打てないからよくバントをしようとしてきた。でもファウルにしかならない。私のカーブは落差がすごいから打者はバットを縦にして構えていた。

高木:さすがにそれはないでしょう。

江川:本当ですよ。縦にしないと当たらないんだから。実際に高2の夏にスクイズで負けたとき、打者のバットは縦でしたから。

高木:伝説によるとバントをしようとして、バットの芯に球が当たってレフト前ヒットになったとか。

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