私たちはついつい、マニュアルに従ってよい結果を得ようという「マニュアル思考」をしてしまいます。しかしそれだと、期待通りの結果が出ない事に腹が立ち、目の前の子どもを罵ってしまうことになりかねません。

 ああしたい、こうなってくれればという願望や期待を脇におき、まずは子どもをよく観察してみてください。すると「あ」と気がつきます。「スジとスジのスキマ」にうまく差し入れる言葉、姿勢に気がつくようになります。そうしたら、それを試してみてください。その試行錯誤を繰り返すと、子どもにどう接したらよいかが見えてきます。答えは本の中にあるのではなく、子どもから読み取るものです。子育て本はたくさんの「着眼点」を知るための参考書、という程度に考えていただいた方が、役に立つでしょう。

 子どもをよりよく観察するには、子どもの様子を「楽しむ」のが一番です。なんでこの子はこんな反応をするのだろう? なぜこんな答えを返すのだろう? それを不思議がり、面白がれば、子どものいろんな面が見えてきます。

 課題は、現代のお母さんたちに「余裕」がない事。特に出産してしばらくは3時間おきの授乳などで、極端な睡眠不足になります。「拷問」で一番つらいのは眠れないことだといいます。そんな状態で子育ても家事も完璧にこなそうとしたら壊れてしまいます。

 私たちは人間です。睡眠も必要、休憩も必要、息抜きや気晴らしもできなければ笑顔を失ってしまう「生き物」です。笑顔で育児をするには、自分にも人間としての弱さを受け入れ、自分に優しくすることが必要です。

 子育ての渦中に入ると話し合う余裕さえ失いがちですから、前もって夫婦で、あるいは周囲の人たちと、どうやって余裕を「こじ開ける」か、話し合うことが望ましいです。以前に、「これからお父さんになる男性に知っておいてほしいこと」という文章にまとめましたので、そちらもご覧になってみてください。

 子育てを楽しめる社会になれば、次世代をより豊かに育むことができるでしょう。でもそれには、たくさんの人たちの協力が必要です。子どもはいずれ社会に出る以上、家族以外の人たちの中へ飛び込んでいく必要があります。だから、さまざまな立場の人たちの理解と協力が必要です。社会全体が、機会があるなら子育てに協力するよ、という心構えをほんの少し持っていただけるだけで、どれだけ子どもたちが救われることか。心の片隅に、そんなことを少し意識していただけるとありがたいです。

 助け合うことで、子育てを楽しむ余裕も生まれます。たくさんの人たちの協力を得ながら一緒に子育てを楽しんでいくことができれば、そんな嬉しいことはありません。