「前回預かった時に比べてガリガリになってきた子がいたので飼い主さんに聞いたらシニアフードに切り替えたって言うんです。人でも肉を食べる元気なご年配の方もいますよね。そんな人の食事を急に介護食にしたら痩せて足腰弱くなっちゃいます。うさぎも一緒です」

 年齢と体調に見合った食事のバランスを常に考えて与えなくてはいけない。

 病気がちになる高齢うさぎにとって専門医が少ない事も大きな問題だ。

「獣医師の学校では犬の授業に比べてうさぎは少ないんですね」

 飼い主が増えてきているためうさぎを検診できる獣医師が増えてきているものの十分な数とは言えない。動物病院のホームページにある対象動物のリストにうさぎが載っていても実際受診すると「見ることはできるけど適切な処置が出来るか分かりません」を言われることもあるという。病院などの適切なアドバイスをする場が少ない事は初心者にとっては不安材料だ。また、うさぎを対象にしているペット保険が少ないうえ、対象になっていてもうさぎの病気が保険適用されにくいことも飼い主にとって負担になる。

 そして最も介護で大変だったと田口さん自身の経験から感じたのは寝たきりになった時だという。

「自ら飲食ができなくなるのでスポイトであげる必要がありますし、排尿は寝たままするので、糞尿の汚れで皮膚炎を起こさないよう下半身のケアが必要です」

 また特徴的な耳も健康な時は自身の後ろ足で掃除が出来るが、寝たきりになれば飼い主が行ったり、場合によっては獣医師にお願いすることになる。

■寝たきりうさぎの食糞問題とは?

 そしてうさぎ介護の中で特徴的なのが食糞処理だろう。

 うさぎは2種類の糞をする。私たちが想像する乾燥した丸い糞と「食糞」と呼ばれる"食べる糞"だ。

「うさぎは食べたものを体内で発酵させ、それを肛門から一度出して食べるという独特な栄養の取り方をします。餌を食べただけでは十分な栄養が取れないんですね。なので寝たきりになると自力で食べることが出来ないので飼い主が食べさせないといけません。空気に触れ乾燥した食糞は食べないので、排泄される時間帯を調べ、出てくる糞を待ちかまえて取ったらすぐ口に運んであげる必要があります」

次のページ
「うさぎは飼いやすい」という誤解