また、時間が経つと、世論の関心が薄れ、記事にしてもあまり読まれなくなる可能性もある。

 したがって、同じ公開をするにしても、少しでも遅らせた方が、官僚にとっては得だということになる。公開請求をすると、なんだかんだと言って、開示請求の書き直しを求めたり、特別の事情があると言って、原則30日とされている回答期限を延ばしたり、審査請求しても簡単には譲歩しなかったり、開示判断が出てもさらに理由をつけて遅らせるというのが、役所の常とう手段だ。

 その遅延行為が酷ければ酷いほど、実は、その文書の内容が役所にとって都合の悪いものだと考えた方が良い。

 以上述べたような、公文書は国民の財産だという建前とは全く反対の官僚たちの意識を理解すると、今起きていることは、極めてよく理解できる。

 ちなみに、行政府の中にいる与党政治家(大臣をはじめとする政務三役、総理補佐官など)も、実は、立場上官僚と同じ利害意識を持っているから、情報公開を積極的に進めようという気持ちにならない。

 私たちは、こうした状況をよく理解したうえで、情報公開をより積極的に利用して、官僚にプレッシャーをかけ、制度の不備な点をクローズアップすることによって、国会での法律改正に生かしていかなければならない。政府は、関連する制度を見直すという姿勢を示しているが、官僚や与党政治家主導の公文書管理法や情報公開法改正では、どんなに頑張っても、単なるアリバイ作りに終わり、抜け穴がいくつも残ることになるだろう。そんなやり方では、公文書を官僚から国民のもとに取り返すことは絶対に不可能であることを肝に銘じ、国民主導の制度改正につなげるべきだ。

 ではどうしたらよいのか。

 この分野においてマスコミの果たす役割は極めて大きい。また、最近は、「情報公開クリアリングハウス」など、民間の情報公開を推進するNPOの活躍も著しい。そこで、マスコミが社を超えて横断的に連帯し、民間NPOと協力して、真に国民のためになる公文書管理と情報公開に関する制度改正案を提言してはどうだろうか。自分たちが提言したものであれば、マスコミも積極的に報じ、国民の関心も高まる。その結果、世論の支持も得られるから、より国民本位の制度改正につながるのではないだろうか。

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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