「隠れアスペルガーの中には、異常なほど空気を読んだり周りに気を使ったりする人もいます。アスペ特有の対人関係における過緊張が原因ですが、症状が強くないだけに、周りに合わせて『良い子』を演じることができるのです」(吉濱氏)

 そんな「気遣いのできる良い子」を、周りも本人も、まさかアスペだとは思わないだろう。しかし、本人は常に他人に対する恐怖心に苛まれ、理由もわからないまま、長年生きづらさを抱えているのだそうだ。

 他にも、職場で複数の仕事を同時進行できず、「これやっといて」といった曖昧な指示を理解できないため、怒られてばかりいる人。怪しい話を疑うことができず、何度も大金をだまし取られてしまう人。恋愛をしたいけれど、適度な距離感がわからず、相手に疎まれたり、すぐ肉体関係を持って捨てられたりする人。このように、人生でつまずくことが多い隠れアスペルガー人は、わけもわからないまま自分を責めて、うつ状態に陥ることも少なくないそうだ。

 度重なるつまずきがアスペのせいだとわかれば、「それだけで生きやすくなる」と吉濱氏。自分や家族に思い当たる節があれば、隠れアスペルガーの可能性を疑い、調べてみてほしい。自分を責めるより、建設的に対処できる方法があるはずだ。(伊藤あゆみ)