片道航空券で飛行機に乗るときは制約がある。チェックイン時に、目的国のビザかその国を出国する航空券のチェックがあるのだ。アジアだけでなく、多くの国がこのルールを採用していた。搭乗を許可した乗客が入国拒否に遭った場合、その航空会社の負担で搭乗地に戻すという決まりも一般だ。しかしそう決めておきながら、入国審査では、出国する航空券の提示は求められないことが多い。

 日本から直行便でタイに向かうとき、このルールは厳格に適用された。

 しかし台北乗り換えにすれば問題はなかった。台湾にも同じルールがあるが、僕は台湾を出る航空券がある。日本から台湾までは飛行機に乗ることができる。問題は台北の空港でのタイ行きの便にチェックインするときだった。ところが桃園国際空港のチェックイン担当スタッフは見逃してくれることが多かった。

 そんなとき思い出す話があった。日本の漫画の著作権である。台湾の出版社はきちんと著作権代を払って日本の出版社と契約する。しかしそこから先がわからなくなることが多いという話だった。アジアでは日本の漫画が翻訳され、安い価格で売られている。その間に、台湾の出版社が絡んでいた。いまはそんなこともないのかもしれないが。

 アジアの入り口は台湾。桃園国際空港を利用するたびにそう思う。僕にとってのアジアの流儀はこの空港からはじまる。

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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