疲労骨折による長期休養からグランプリファイナルの舞台に戻ってきた宮原知子選手。「スポーツ整形は『痛いけどやりたい』というアスリートの気持ちをわかってあげられるかどうか」だと土屋明弘医師は言う。(C)朝日新聞社
疲労骨折による長期休養からグランプリファイナルの舞台に戻ってきた宮原知子選手。「スポーツ整形は『痛いけどやりたい』というアスリートの気持ちをわかってあげられるかどうか」だと土屋明弘医師は言う。(C)朝日新聞社

 平昌五輪がまもなく開幕する。一方、国内では2020年東京五輪という一大イベントを控え、スポーツ熱も高まりを見せている。選手が競技でベストを尽くすためには、どれだけ良い状態でトレーニングや試合に臨めるかが重要だ。発売中のAERAムック『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』では、専門の医療分野でスポーツ外傷・障害と向き合い、アスリートの活躍を支えるスポーツドクターを競技別に取材。ここではフィギュアスケートを紹介する。

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 冬季スポーツの花形、フィギュアスケート。氷上を華麗に舞う選手たちの健康を支えているのが、土屋明弘医師をはじめとする日本スケート連盟医事委員のスタッフたちだ。

 医事委員会には「救護」と「強化」、それぞれを担当する医師がいるが、前者が大会のときにリンクサイドで待機する役割であるのに対し、後者は日常のケアやサポートを行うのが務め。ただ世界大会などのときには、日本選手団に帯同することもある。平昌オリンピック開催年である今季は、グランプリシリーズ全試合に6人の医師が交代で帯同した。土屋医師は説明する。

「4年前、強化副部長を任されてから、従来のやり方をいろいろと変えてきました。ひとつが強化部に医師とメディカルトレーナー、トレーニングコーチの3部門が一体となったチームを作り、連携を強化したことです」

 毎週末、ナショナルトレーニングセンターが置かれている中京大学アイスアリーナに、特別強化選手、強化A、B選手が集まり練習する。ここに毎回メディカルトレーナーとトレーニングコーチがつき、月に1回は医師も参加することを義務づけた。

「選手から相談を受けることもありますし、トレーナーやコーチが異変に気づき対応を聞いてくることもある。医療はチームプレーです。一体化して適切な治療ができ、選手が活躍できたときに一番やりがいを感じます」

■「痛いけどやりたい」をわかってあげられるか

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