山本:組織にコミットしている人間は、達成しなければならないことが達成できないと怒る生き物なんです。

村上:クライアントに納品する成果物は当然守りますけど、僕自身には売り上げ目標もノルマもないので、そのプレッシャーが一切ない。僕は2年前から今のクライアントと交渉して、週3稼働に減らしてもらったんですが、週5稼働の契約から、自ら申し出て売り上げを60%に減らすなんて、売り上げ至上主義のサラリーマンには到底できるわけがない。自分で働き方改革ができることがフリーランスのうまみ。

山本:なるほどねえ。そう考えますと、改めて『半年だけ働く。』のタイトルの余韻、いいですよね。で、あとの半年は?と気になる。人によって好きなことだったり家族だったり、そのバランスを本当は個人がそれぞれ自由に決められるはず。が、あえてせずに安易なほうを選んで、流されることで何かを捨ててきた人も多い。自由な時間ができてもしたいことがない、旅にも行きたくない、打ち込める趣味もない、何か突き詰めてものをつくることも、考えることもない。そういう社畜には刺さらない本かもしれないですね。

村上:結局、いきつくところは「何をやりたいか?」なんですよ。やりたいことがなければ、一生鳥かごの中で過ごせばいい。飼い主が毎日餌くれますし、かごが外敵からも守ってくれます。飼い主が病気で倒れたら飢え死にしますけど(笑)。やりたいことがあれば、鳥かごから飛び出して、自由に羽ばたけばいい。その代わり、カラスに襲われるリスクがあるし、餌も自分で探さないといけない。そういったあらゆるリスクを背負う覚悟がある人は、フリーランスとして勝負してほしいと思います。

(取材・構成/安楽由紀子)

村上アシシ/1977年札幌生まれ。ITコンサルタント・プロサポーター。東京理科大学卒業後、外資系コンサルティング会社のアクセンチュアに入社。2006年に個人コンサルタントとして独立以降、半年で1年分稼いで、残りの半年を旅して暮らす「半年仕事・半年旅人」のライフスタイルを確立し、継続している。最新刊『半年だけ働く。』(朝日新聞出版)

山本一郎/1973年東京都生まれ。著作家、ブロガー、投資家、経営者。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2000年IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。近著に『読書で賢く生きる。』(共著、ベスト新書)