対談する山本一郎氏(左)と村上アシシ氏(撮影:ONE PHOTO/Y.Arai)
対談する山本一郎氏(左)と村上アシシ氏(撮影:ONE PHOTO/Y.Arai)
山本一郎氏(左)と村上アシシ氏(撮影:ONE PHOTO/Y.Arai)
山本一郎氏(左)と村上アシシ氏(撮影:ONE PHOTO/Y.Arai)

 自著『半年だけ働く。』のタイトル通り、経営コンサルタントとして半年で1000万円を稼ぐ村上アシシ氏。残りの半年は著述家として、サッカーのプロサポーターとして過ごしているという。そんな村上氏と、個人投資家で作家の山本一郎氏が、生々しい「年収」の話に切り込む。年収1000万円を超えるには何が足りないのか。家電は数千円でも安く買いたいのに、なぜ年収を数十万、数百万円上げることには無関心なのか……。

【対談を終えた二人はこちら】

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山本一郎(以下、山本):年収1000万円稼げる人は日本では約4%。非正規雇用の割合は全体の37.5%、一説には4割を超えたと言われていて、派遣会社に登録する事務員なんて、会社から支払われる給料の2割から4割をピンハネされるという話らしいんですよ。

村上アシシ(以下、村上):年収5~600万円の人が、フリーランスになれないかというとそんなことはないです。月給50万の人が独立して単価を2倍にしたら、半年間で600万円稼げるんです。

山本:理論上はそうですね。しかし、月俸を2倍って簡単に仰るのは何か確信でもおありなんですか。

村上:例えば医療業界。看護師の紹介エージェントは多数あって、離島などの人材不足のエリアでは、一般的な給与の約2倍ということもあります。そこで半年間働いて、半年間は海外で過ごし、また帰ってきて働くということもできる。労働力が不足し、移民も受け入れないとなると、知識産業や手に職を持った人の職種は、どんどん売り手市場になっていく。

山本:働いている人のリソースは金か時間ですよね。金があれば、余力のある財産を使って証券やったり投資やったり運用できる。金がなければ時間を使って働くしかない。かつてOLが夜に水商売をするのは、職業倫理上の問題とは別に「社員が水商売をするのは会社の立場として悪い」という議論があったんですが、本来は、何時から何時まで会社に決められた時間をきちんと働いていれば、その分の給料しか出ていないのだから、他の時間は個人の自由のはず。会社に迷惑をかけなければ、本来は副業は許されなければいけない。たとえば、研究職の人が週末に講師や執筆活動など別の仕事をするケースは多いけれども、そこで得たスキルは本来の仕事に生かすなどいい循環ができるだろうし。一方で、副業をするとなかなか休めないという問題もある。お医者さんが身体を壊す理由はオーバーワーク。勤務医としてフルで働いた上に、土日を健診や当直などのバイトに費やして疲弊してしまいます。そういう場合は、本来の仕事の単価を上げる必要がありますよね。

村上:大学の勤務医はステイタスですし、やりがいや最先端医療に従事する喜びもあるでしょう。ヒエラルキーのトップに行くためには下積みも必要。途中でドロップアウトして開業医になれば一気に収入が上がるわけですから、ステイタスと収入がトレードオフの関係にあると言えます。名誉を取るか実利を取るか。本人の価値観、人生観が顕著に表れる選択だと思います。

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