1月10日、銚子丸は2018年5月期の第2四半期決算を発表した。売上高は前年同期比4.5%減の89億6千万円と落ち込んだ。同社は客数が伸び悩んだ原因として夏場の天候不順なども挙げているが、石田氏は「大手の100円すしチェーンがあちこちに出店を進めている。影響を受けていることは間違いない」と話す。去年の夏、銚子丸のある店舗から数百メートル離れた場所に100円すしチェーンがオープンした。開店日、石田氏は視察も兼ねて食事に行ってみたという。「銚子丸の主要なお客さまは50代以上の高齢層。100円すしにはあまりそういう方は行かないのではと思っていたが、意外にその層も来店していました」

 価格競争をするつもりはないという石田氏。100円すしに比べれば少し高い価格設定に満足してもらえるよう、商品とサービスを磨いていきたいという。一方で光明があるのは、アンケートで顧客満足度1位となったことが示すように、来店客からは高く評価されているという事実だ。「とにかく一度店に来てもらって、100円すしとの違いを体感してもらうことが大切だと感じています」(石田氏)。従来のコア層である高齢層に加え、若者やファミリー層にもアピールしていきたいという。そのため注力するのがSNSやモバイル会員の活用だ。これらを通じてクーポン券などを配布し、これまであまり来店していない層にも働きかけている。

 客の期待を超えるすしネタに加えて、高い満足度に貢献しているのが、店舗を劇場に見立てスタッフを劇団員に見立てる、活気のある接客サービスだ。「その日おすすめの魚をさばき、皿をお盆に並べて『おろしたての〇〇はいかがですか!』と店内を回るパフォーマンスを時折するのですが、来店客が多くてノリのいい高洲店(千葉市)、西新井店(東京都足立区)などでは拍手が起こることもあります」(石田氏)。すし皿が回るレーン内側の調理スペースには数人のすし職人が配置されるが、そのリーダーを「座長」と呼ぶ。「最高の笑顔と元気な声でその日のおすすめを売り込む。店一番のセールスマンであれと言っています」と石田氏は話す。

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板前より人気のある名物女将もいるというが