「現在のように膠着した状態に陥ると、極端な主張をする人も出てくるでしょう。たとえば、今は『リフレ派』が経済政策の中心にいますが、あらゆる経済政策など不要だという『反リフレ派』が脚光を浴びる可能性もあります。しかし、極論はできるだけ避けるべきです。いまの日本に、特効薬はありません。忍耐強く、さまざまなアイデアを試してみるしかありません」

 がんの治療で言うならば、抗がん剤治療にたとえられるかもしれない。

 異次元緩和という抗がん剤は、ある程度効果もあったが、副作用も大きかった。ただ、これまでに行ってきた治療をなかったことにすることはできないし、ずっと続けてきた薬の投与を突然やめれば、さらなる副作用が起こる可能性もある。

 「リフレ派は、金融政策という『薬』に過剰な期待をしすぎたと思います。やはり、日本社会が直面している人口減少や少子高齢化などは、無視はできない。即効性は期待できないが、社会保障改革を推し進め、少子化に歯止めをかける地道な努力を続けるべきだと思います。金融政策だけではなく、財政政策、そして構造改革の3つをうまく組み合わせて、試行錯誤を続けていくしかないでしょう。何度も言いますが、『これさえ飲めば治癒する』というような特効薬は、存在しないのです」

 現実を見つめて、混乱が起きないようなソフトランディングができる。そんな治療方針を立てられるリーダーが今こそ必要なのかもしれない。(取材・構成/星政明)

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