安室奈美恵とデビュー前から一緒に歩んだメイクが明かす26年間の真実

2017/12/31 18:25

――2010年は黒い衣装で、力強い雰囲気が出ています。

 このときは奈美恵ちゃんがやりたいことを思いっきりやっていて、女性アーティストとして一つの王国を築いたような印象を受けていた時期でした。"安室奈美恵"ってこんな感じ!という方向に、突き進んでいるような。髪はかき上げて雰囲気を醸し出すというよりは、前へ走っていくようなイメージです。どう動いても髪が本人の動きを邪魔しない。強さや疾走感を大事にしていました。

 アイシャドーはトープ(灰色がかった茶色)っぽい、グレーブラウンやチャコール系の色をよく使っていました。眉は自然な感じに整えていることが多いですね。

――アリーナツアーで50万人を動員するなど、ライブも忙しい時期ですね。ライブで思い出に残っていることはありますか。

 実は私は2000年ごろまでしかライブを一緒に回っていません。私自身も子どもを2人育てながら働いていて、1人目のときは東京・大阪・名古屋、ほか10カ所ぐらいのライブを回っていました。2人目を産んだときには、彼女は全国で何十公演もやるようになっていて、2人を育てながらライブを回るのは厳しくなってきていました。これは女性が働きながら子育てをして生きていくうえで、避けては通れない悩みですけれど……。

 そんなときに彼女が「明海さんはもうライブツアーを回らなくていいですよ」って声をかけてくれました。アシスタント2年目の子が育ってきていたので「その子で頑張ってみましょう」って。そして「いつでもどこでも遊びに来てくださいね」って言ってくれました。人として深い人で、「来られないならもういいです」っていうことは一切なく、みんなでうまくやりましょうと考える人なんです。

――新しい人にも任せられる懐の深さがあるんですね。

 本人が強いから、ちょっとしたことで揺らがないんですよね。私のアシスタントから独り立ちしていった子たちと3、4人で奈美恵ちゃんのヘアメイクをほとんどやらせてもらってきましたが、彼女たちが育っていったのは本当に奈美恵ちゃんのおかげなんですよ。初めての人に顔を触らせるのって、怖いじゃないですか。メイクはお習字と同じで、同じお手本を見て描いたところで手が違うと全部違うものが出来上がるもの。どんな仕上がりになるのか不安があって当然だと思う。でも彼女は、どうしても私の都合が悪いときに「あの子にやってもらいましょうよ」ってサラッと言うんですよ。「不安じゃないの?」って聞くと、「だって明海さんのメイクをずっと見てきたんだから、変になるわけないじゃないですか」って。そういうところが本当にカッコイイんです。

――2017年は異彩を放っていますね。これは現在の安室さんを表しているのでしょうか。

 今の彼女が好きなスタイルというよりは、ちょっと先の未来をイメージしています。こんなの流行るといいなっていう提案でもなく、自由と広がりがあって、どうにでも創造していける感じですね。いままでにあまりない感じ、というのが裏テーマです。

 奈美恵ちゃんは何でも似合うので、CDのジャケット写真のアイラインの引き方だけでも、すべて違う提案をしてきました。買ってくれた人に「いつも違って、いつもキレイ。いつもカッコイイ」って思ってほしいじゃないですか。でも、私がどんなメイクをしても彼女は瞬時に消化して、自分の表情や動きでもっと素晴らしいものにしてきてくれました。人に見せるというポテンシャルが非常に高いんです。引き出しが多くて、同じ撮影をしていても振り幅が広い。ご本人は「私は服とメイクを変えると違って見えるから得してるんです」って、言うだけなんですが(笑)

――そうやって26年以上、一緒に仕事をしてきた安室さんが引退を表明しました。その後のインタビュー番組では、悩みや不安を抱えていたことも率直に語っています。今の彼女をどう見ていますか。

 引退を表明したからといって彼女が別人になるわけでもなく、この撮影のときも「あと1年楽しみましょ」って、いつもと変わらない様子で言っていました。ご本人の中で悩んでいた時期はあったのかもしれませんが、どんなときも自分の意思で仕事を選び、セルフプロデュースをしているなと私は感じていました。

 よく「この時期はCDが300万枚売れた」とか「この時期はどうだったか?」って聞かれますが、そういうことはなにも関係なかったんです。彼女との関係で人生の山や谷を語るなら、私にとっては14歳の奈美恵ちゃんを見たときが1番の山だったかもしれません。本当にビックリしたんですよ。それからは、撮影するごとに感動の山が何度もやってきています。お洋服もヘアメイクも何でもハマる彼女と一緒にやれることが、楽しくてしょうがなかった。

 そういう意味では、私の大好きなミューズの1人がいなくなるのは寂しくてしょうがないですね。でも彼女が元気で幸せでいてくれさえすれば、私はそれでうれしいです。

――自分の素材を棚に上げてお聞きしますが、どうすれば安室ちゃんに近づけるか教えてください。「安室ちゃんみたいになりたい!」という女性たちに向けて、何かアドバイスを。

 私は、自分の好きなものをちゃんと見極めるセンスの良さや自由さが、人生においてとても大事だと思っています。好きなもの、信じるものがその人の個性になる。それは26年以上、彼女を見てきて実感するのですが、いわゆるアムラー現象だって、その後の「奈美恵ちゃんっぽさ」だって、彼女が好きなことをやり続けて作ってきたものです。

 私は人は見た目だと思っているんですよ。外見は中身が外に現れたものだし、外側がちゃんとしている人は中身もちゃんとしていると思う。奈美恵ちゃんがTシャツとデニムしか着ない人だったら、こんなにたくさんの女性たちが憧れ続ける存在にはならなかった。それは、メイクひとつを取ってもそうです。

 メイクをしないで生きていく人はもちろんいるし、それはそれで全然いいと思う。テクニックも二の次。自分を信じるものをちゃんと貫き通すことが、素敵な個性と人格を形成していくと私は信じています。

(聞き手/AERA dot.編集部・金城珠代)

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