テレビ界初の漫画原作バラエティ『 カイジ』の革新性とは? (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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テレビ界初の漫画原作バラエティ『 カイジ』の革新性とは?

連載「道理で笑える ラリー遠田」

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年末年始にはテレビ各局でさまざまな趣向を凝らした特番が放送されている(※写真はイメージ)

年末年始にはテレビ各局でさまざまな趣向を凝らした特番が放送されている(※写真はイメージ)

 2つ目は、人間ドキュメントとして面白かった、ということだ。12人の参加者は皆、重い借金を背負っている。借金の額や理由はそれぞれだが、全員が切羽詰まった状況に置かれていて、賞金を真剣に求めている。この番組では、参加者がギャンブル競技で争う本編パートに差し挟まれるような形で、それぞれの参加者を追いかけたドキュメンタリーのパートがあった。

 女性の心を持った40歳の男性地下アイドル、児童養護施設で育った男性、漫画喫茶暮らしのホームレス、3年間家から出ずにニート生活をしている男性など、深刻な事情を抱えたメンバーが、一発逆転を狙ってこの企画に挑んでいる。番組では、彼らの人生を追いかけていき、敗退した人のその後にもスポットを当てていく。真剣勝負と人間ドキュメントが絶妙なバランスで融合しているさまは、まさに頭脳戦版の『SASUKE』という感じで、目が離せなかった。

 3つ目は、原作漫画の面白さがきちんと取り入れられて、うまく再現されていたということだ。原作では主人公たちが文字通り命を懸けて勝負に挑む。テレビ版『カイジ』では、もちろん本当に命を張ることはできない。しかし、訳ありの参加者たちは、そのぐらいの意気込みでこの番組に挑んでいたし、彼らにそう思わせる番組側の仕掛けもあった。

 例えば、前述の「鉄骨渡り」では、薄暗い場所に鉄骨が渡されていて、参加者の位置からは下が真っ暗で何も見えないようになっている。そこを彼らは命綱もなしで渡っていかなくてはいけないのだ。恐らく下の見えないところに安全のためのマットかネットが用意されていることは想像できるのだが、それでも、平常心を保って鉄骨を渡っていくのは簡単なことではない。それ以外にも、ギャンブルを主催する側の人間の演説シーン、参加者が地下労働施設で働かされる場面など、原作の雰囲気をうまく再現していた。

 最近のエンタメ界では、漫画原作の映画やドラマがやたらと目立つ。あまりにもその出来が悪いと、原作ファンから非難の声があがることも多い。

 だが、「業界初の漫画原作バラエティ」と銘打たれたこの番組では、恐らくそのような批判はほとんどないだろう。むしろ、地上波テレビという制約がある場で、これだけ漫画のイメージを再現してスリリングな状況を作ったことに驚かされる。「漫画原作バラエティ」という新しいジャンルには、まだまだ可能性があると思う。(ラリー遠田)


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ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・ライター、お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など著書多数。近著は『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)。http://owa-writer.com/

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