勘違いをするのは、グラウンドでプレーする選手だけではない。6月7日のDeNAvs楽天(Koboスタ宮城)では、ボールボーイの勘違いがトンデモハプニングを誘発した。

 DeNAが6対2とリードして迎えた3回1死一、二塁、3番・ロペスが三塁線をゴロで抜いた。フェアと判定され、2者が生還したが、なんと、この打球をファウルと勘違いした左翼ファウルエリアのボールボーイが捕球してしまった。

「えっ?」という表情で全選手が注視したことから、ようやく、ことの重大さに思い当たったボールボーイは呆然と立ち尽くすばかり。

 審判団が協議した結果、ボールデッドとなり、1死二、三塁からプレー再開。一度はホームベースを踏んだ一塁走者の梶谷隆幸は三塁に戻された。

 2点タイムリーが1点止まりになったが、ロペスは「追加点が欲しかったので、適時打になり、うれしい」とボールボーイを気遣ってか、紳士のコメント。次打者・筒香嘉智の中犠飛で梶谷も生還し、結果オーライになったのは、何よりだった。

 走者にとって一番厄介なのは、内野へのライナーである。「抜けた!」と思って、ベースを飛び出した直後に好捕され、あっという間に併殺に取られてしまうからだ。

 だが、外野への大飛球も、走者が判断を誤ると、もっと怖いということを思い知らされたのが、7月19日の西武vsソフトバンク(北九州)だった。

 5対5の同点で迎えた6回、西武は先頭の炭谷銀仁朗が左前安打で無死一塁。次打者・金子侑司も左翼後方に大きな当たり。レフト・中村晃が必死にグラブを伸ばしたが、わずかに届かず、フェンス直撃の長打コースになった。普通なら、1点入っているか、無死二、三塁とチャンスが広がっていても、おかしくないケースだ。

 ところが、あろうことか、一塁走者の炭谷は、二塁ベースを回ったところで、ダイレクトキャッチされたと勘違い。二塁ベースを踏み直すと、慌てて一塁に戻りはじめたのだ。

 このとき、打者走者の金子侑はすでに一塁を回り、二塁に向かおうとしていたが、予想もしない炭谷の逆走に呆然とするばかり。目の前を炭谷が通過したため、不運にも金子侑は走者追い越しアウトになってしまった。打球の行方を見守りながら自重していた前の走者を後ろの走者が追い越してしまうケースはたまにあるが、“逆追い越し”アウトというのは、あまり聞いたことがない。

 さらに悪い流れは続く。1死一塁から次打者・秋山翔吾も安打を放ったが、後続2者が凡退。無死から3連打を記録しながら無得点という拙攻が祟り、西武は6対10で敗れた。

 しかも、この試合で西武はけん制死1、走塁死3を記録。現役時代に日本シリーズで“神走塁”を披露した辻発彦監督も「野球の神様が『あんなミスをしていたら勝てない』とね。ミスがテンコ盛り」とオカンムリだった。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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