トランプ大統領 (c)朝日新聞社
トランプ大統領 (c)朝日新聞社
尾形聡彦・朝日新聞オピニオン編集次長(撮影/横田一)
尾形聡彦・朝日新聞オピニオン編集次長(撮影/横田一)

 北朝鮮からの木造船が日本に漂着したニュースが相次ぎ、11月末には2ヶ月半ぶりのミサイル発射、トランプ大統領の軍事オプションの可能性が高まるなど目が離せない。トランプ氏や金正恩朝鮮労働党委員長はどう動くのか――。『乱流のホワイトハウス トランプVS.オバマ』(岩波書店)の著作がある尾形聡彦・朝日新聞オピニオン編集部次長兼機動特派員が今後のトランプVS金正恩の行方を語った。

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――トランプ政権内で北朝鮮対応で意見が割れているのか。

尾形氏:「軍事力を使うべきではない」ということではティラーソン米国務長官もマティス米国防長官も一致していると思います。ただトランプ大統領が制御不能となって軍事オプションに走る恐れがある。だから米国内では「トランプ大統領に戦争を命令された時にどうやって回避する道があるのか」「国防長官を通じて命令が出されるわけだから、国防長官が抗議をするべきだ」という議論も行われています。「トランプ大統領は半分ぐらいしか制御が効かない」という危機感の裏返しでもありますが、トランプ大統領が軍事オプションの考え方を持っていて、なおかつ衝動的に決めるリスクがあることを政権に近い人たちはみな知っているのです。

――日本はどう対応すればいいのでしょうか。

尾形氏:トランプ政権は「自分たちに届く核ミサイルが配備されることは困る」という強い懸念を持っています。大統領に近い共和党の重鎮、グラム上院議員は「我々は、狂った北朝鮮の男に、米国本土を狙える能力を持たせることは許さない」と言い、最近は「我々が軍事オプションを使う可能性は10のうち3つ」、つまり30%もあると明言しています。「コントロール不能な北朝鮮が核を持つ、という安全保障上の危険に米国がさらされる前に、軍事的に攻撃をして止める」というのがトランプ政権内にある考えであり、米国の論理なのです。

 その際に問題なのは、日韓で甚大な被害が出るおそれがあるということです。米国のジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、「38ノース」という北朝鮮問題などの分析サイトに詳細な被害想定を発表しています。通常の核ミサイルであれば、東京とソウルそれぞれで死者が最大で100万人規模、9月の水爆実験で使われたような弾頭が撃たれれば、死者は最大で200万人規模、という戦慄するような被害想定です。

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