だが、社員の数が増えたり、業務量が減ったりしたわけではない。会社からは夜になると強制的に退社させられるが、結果的に社内のイントラネット環境に接続できる駐車場の車の中で仕事をしたり、夜間でも営業しているモデルルームなどで仕事が続けられていたという。こういった「隠れ残業」や「持ち帰り残業」は労働基準監督署では発見しづらい。ブラック企業の手口はさらに巧妙化しているといえる。

 また、若手社員の役割にも変化があるという。

 2017年10月に有罪判決が出た大手広告代理店電通の違法残業事件では、常態化した長時間労働により新入社員の女性が自殺した。坂倉さんは言う。

「過去の過労死では、たくさんの仕事を一人で抱え込んだ40代以上の中堅やベテラン社員が死に至ることが多かった。それが近年は、業務のマニュアル化が進み、誰にでもできる仕事が増え、新入社員にも膨大な業務量が任せられるようになった。それに耐えきれずに体を壊したり、うつ病になったりするケースが目立っています」

 ブラック企業では、労働組合が労働環境の改善を求める組織として機能していない企業も多い。もし、悪質な労働環境に悩んでいる人がいれば、「ブラック企業ユニオン」など外部の労働組合に相談することも手段の一つだ。また、就職の前に公開されている情報を精査することで、ブラック企業の罠にはまらないことも大切だ。(AERA dot.編集部・西岡千史)