厚労省が「労働基準関係法令違反に係る公表事案」でホームページに公表した送検日ベースでの企業名の数の年月推移(東京商工リサーチ、編集部調べ)
厚労省が「労働基準関係法令違反に係る公表事案」でホームページに公表した送検日ベースでの企業名の数の年月推移(東京商工リサーチ、編集部調べ)
厚労省が公表した労働基準関係法令に違反した主な企業のリスト(「労働基準関係法令違反に係る公表事案」より)※東京商工リサーチ、編集部調べ) 1/2
厚労省が公表した労働基準関係法令に違反した主な企業のリスト(「労働基準関係法令違反に係る公表事案」より)※東京商工リサーチ、編集部調べ) 1/2
厚労省が公表した労働基準関係法令に違反した主な企業のリスト(「労働基準関係法令違反に係る公表事案」より)※東京商工リサーチ、編集部調べ) 2/2
厚労省が公表した労働基準関係法令に違反した主な企業のリスト(「労働基準関係法令違反に係る公表事案」より)※東京商工リサーチ、編集部調べ) 2/2

 長時間労働や賃金不払いなど労働関係法令に違反した疑いのある企業名を、今年5月から厚生労働省がホームページで公表しはじめてから約半年。政府が「問題あり」と認定したブラック企業のリストは毎月更新され、その数は最新版(11月15日発表)では496社にのぼっている。

【表】あの有名企業も! 厚労省発表の“ブラック企業”一覧

 リストは各都道府県の労働局別に公表されている。企業名の公表期間は原則1年で、改善が認められ、公表を続ける必要性がなくなったと判断されると1年以内でも削除される。

 ブラック企業名の公表は、労働環境が悪い企業を“見せしめ”にすることで改善を促す目的がある。だが、現時点で抑止効果が現れているとはいえないようだ。

 グラフでわかるように、企業名公表の基準となる書類送検日を月ごとに見ると減少傾向は見られない。むしろ9月が46件、10月が61社、11月が76社と増加傾向にある。

 ブラック企業の問題が改善されないのは、少子高齢化や景気回復による人手不足、利益確保への圧力などの要因から、労基法を軽視する企業が後を絶たないためだ。リストには中小企業が目立つが、パナソニック、電通、ヤマト運輸、エイチ・アイ・エスなどの有名企業も多数含まれている(表参照)。

 もちろん、厚労省の発表に含まれていない企業であれば、安心というわけではない。若者の労働環境の改善に取り組むNPO法人「POSSE」の坂倉昇平さんは、こう話す。

「公表された企業は、遺族や当事者の訴えによって、過労死・過労うつや死亡事故を含む重大な労災事故が認定された企業が多い。実際には、違法な長時間労働が恒常化している企業でも、労働基準監督署から指導を受けた段階で是正報告書を提出すれば、書類送検されることはほとんどありません」

 ある大手住宅メーカーでは、労働基準監督署から複数の是正勧告を受けたあと、イメージ回復のために労働環境の改善への取り組みをさかんにテレビやホームページなどでアピールをしていた。

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今では若手社員が過労死する時代に