「草燃える」の特徴のひとつとして、大河では初めてすべてのセリフを現代語口調にしたことが上げられる(例えば政子のセリフの「死んだ方がましなんです」というように)。最初は視聴者を戸惑わせたが徐々に浸透し、これ以降の大河ドラマでは現代語口調の作品が増加していく。

「現代語口調のセリフはとても良かったですね。今私たちが使っている言葉ですから、役に入りやすかったという記憶があります」

 スタッフや共演者については、「プロデューサーの斎藤暁さん、演出の大原誠さん、共演の石坂さん、郷ひろみさん、松平健さん、皆さん全力投球していて素晴らしかったです。『亡き殿が遺された鎌倉を守るために、私なりに必死にやってきたけど気が付くと私にはもう誰もいない』、というのが政子の最後のセリフなんですが、言い終わって楽屋に戻ったときは全身から力が抜けて立っていられませんでした。掛け持ちをせずに政子だけと向き合ってきた一年間でしたから。それは私にとって一生忘れられない体験でした」。

「草燃える」はNHKインターナショナルを通じてロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨークでも放送された初めての大河ドラマで、のちに「将軍」という大ヒットドラマ誕生のきっかけになった日本ドラマとしても記憶されている。(植草信和)

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植草信和

植草信和

植草信和(うえくさ・のぶかず)/1949年、千葉県市川市生まれ。キネマ旬報社に入社し、1991年に同誌編集長。退社後2006年、映画製作・配給会社「太秦株式会社」設立。現在は非常勤顧問。

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