8年目の菊池雄星をエース、浅村栄斗をキャプテンに指名してシーズンをスタート。勝利を目指しながら、選手の育成をシーズン中にもかかわらず忘れなかった。その期待に、まず菊池がエースの活躍を見せる覚醒ぶり。野手陣も、これまで懸案だった遊撃手にルーキーの源田壮亮を起用。外崎修汰、山川穂高らの台頭を促した。

 浅村、秋山翔吾、中村剛也、栗山巧、メヒアらで固まりつつあったチームに厚みを加えた手腕は評価されるべきだろう。敗因を選手に押し付けるような発言がメディアを通して聞こえてこなかったのも、チームを前進させた。

 ただ、試合の勝負どころで代打陣をベンチに置いたまま敗れるなど、勝負手という部分では課題がある。代打陣の層が厚かっただけに、もうひと勝負打ってほしかった。

【工藤公康監督(ソフトバンク)】 評価:A

 2年ぶりに史上最速優勝を更新するぶっちぎりのリーグ制覇は見事だった。和田毅の故障、バンデンハーク、武田翔太が不調の中、東浜巨をエース格に押し上げた。千賀滉大は1年間、フルには起用できなかったものの、先発陣を作り上げた。石川柊太、松本裕樹など将来性のある投手陣にチャンスを与えるなど、投手陣を活性化。シーズン途中、投手交代の速さにクローザー・サファテの反感を買った時期もあったが、途中加入のモイネロを使いこなしてうまく修正した。

 打線の方は内川聖一の離脱がある中、厚い選手層を余すところなく適材適所に起用した。若い上林誠知のブレークを引き出すなど、打線全体に厚みも加えた。

 また、シーズン中盤まで2位につけながら、勝負どころの7、8月で一気に勝負をかけて、首位を独走したのは見事だった。CS・日本シリーズはやや苦しい戦いを余儀なくされたが、それでも選手を信頼して勝ちきることに成功した。(文・氏原英明)

●プロフィール
氏原英明
1977年、サンパウロ生まれ奈良育ち。地方新聞社勤務を経て、03年からフリーライター。夏の甲子園は03年から大会をすべて観戦取材するなど、アマチュア野球に精通。現在のプロ野球選手のアマチュア時代を知る強さを生かし、プロの現場でも成長ぶりを追いかける。一方、最近では個性がどう生かされているかをプロアマを問わず観戦の主眼に置いている。