全部で電子ファイルは1340万件 、その中にメール、パスポートのコピー、企業の記録、領収書などもあった。

 それらを最初に入手したのは南ドイツ新聞の2人の記者だが、彼らは資料のグローバル性と重要性を鑑みて、「パナマ文書」の報道でピュリッツァー賞を受賞するなど成果をあげた国際調査報道連合ジャーナリストー(ICIJ)ともう一度組んで世界中の同僚記者と情報集をシェアすることにしたのだ。

 ICIJはワシントンDCに本社あり、世界中の調査報道記者と協力する非営利の報道機関だ。組織の使命は国際的な問題をより深く報道することだ。そのため暗号化した情報交換のため必要なソフトウェアも発達して、国際的なニュースルームの調整役も果たしている。

 よりグローバルな報道をするため、ICIJは4月に東アジアから南米までプロジェクトに参加している記者を呼んで、ミュンヘン(南ドイツ新聞の本社)で最初ミーティングを開始。そこでプレッツェル(ドイツの焼き菓子)を食べながら、2日間で100人以上の記者がそれまでの取材結果を検討したり、同僚と話ししたりしてプロジェクトの内容に関する理解が深まった。みんなで発表日も含めて今度の取材戦略を決めた。

 1カ月後、5月上旬に、特別にアジアのミーティングも行なった。インドネシアのジャカルタで、日本、インド、タイや韓国など8カ国の記者とICIJのアジアパートナーコーディネートも務める私が「テンポ」(Tempo)というICIJパートナーでもある、インドネシアの有名な雑誌を発行する会社で会議をした。資料の分析を始めとして、国境を超えたネタや、発表日までどのように協力できるのかを話し合った。

 それから、「パラダイス文書」を準備すると同時に世界中に記者らは、北朝鮮のミサイル発射、メキシコの地震、ドイツと日本の選挙、アメリカとロシアとの論争、ヨーロッパのテロ事件、そして10月には地中海の島国マルタで「パナマ文書」をもとに政府の疑惑を告発した女性ジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチア氏(享年53)が爆殺されるという悲しい事件が起こった。

 これは私たちにとって悪夢で ショックだったがプロジェクトに参加している記者たちは取材をし続けた。

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