また、昔はそもそも女性芸人の数が少なかった。女性が演芸の舞台に立っているだけで物珍しいと思われていた。だから、男女コンビが舞台に上がると、観客から「この2人は付き合っているのか?」「結婚しているのか?」という目線で見られるのは当然のことだった。当事者である芸人たちは、それを意識して、自分たちが「付き合っている」「夫婦である」「夫婦だったが離婚した」ということを話題に出して、恋愛や結婚にまつわるネタを演じることが多かったのだ。

 ところが、最近になって、お笑いがブームになり、芸人を目指す人が増えると、女性芸人の数も急増した。そして、交際中でもなく夫婦でもない、新しい形の男女コンビが徐々に増え始めた。

 その先駆けとなったのは、2004年の『M-1グランプリ』で準優勝してブレークした南海キャンディーズだろう。おかっぱ頭で怪しい風貌の山里亮太と、体は大きいが人の良さそうな笑顔が魅力的なしずちゃん。唯一無二の個性を持ったしずちゃんのキャラクターを生かした漫才は、新しい時代の到来を予感させるものだった。

次のページ