ソフトバンク・工藤監督 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・工藤監督 (c)朝日新聞社

 クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ(FS)開幕を翌日に控えた17日、工藤公康監督の共同会見は、2時間の全体練習終了後に始まった。無事に最終調整を終えた選手たちが、ロッカールームへ引き上げたのを見届けた指揮官は、決戦を前に、心の高ぶりが抑えられなかったのだろう。

「ひとつも負けるつもりはない。全部勝ちに行きます」

 不敵ともいえる『不敗宣言』が、本拠地・ヤフオクドームの、静かなグラウンドに響き渡った。

 FSでの相手はどちらになるのか。2位西武と3位楽天との間で繰り広げられたファーストステージの決着がつく16日の第3戦を、工藤監督は「途中から見たよ。テレビじゃなく、iPadだけど」。そして、そのおどけた口調とは裏腹に、試合内容はきっちり、シビアに分析していた。

 8回に楽天のウィーラー、枡田慎太郎の本塁打が飛び出し「これで決まったなと思ったよ」。そこから言及したのは、被弾した西武のシュリッターのことだった。今季64試合、63回3分の2を投げ、被本塁打1という安定したセットアッパーだ。ところが、この1回だけで2本塁打を許した。想像もつかない、まさかの展開が致命傷になる。工藤監督はそこに、短期決戦の“怖さ”を改めて痛感したようだった。

「シュリッターはシーズン1本しか打たれてないのに、あそこで2本でしょ? だからといって、シュリッターが悪いとか言えないじゃん? やってみないと、分かんないんだよ。誰(の調子)が良いとか、悪いとかなんか、やってみないと、分かんないよ」

 143試合制のシーズンならば、大量失点を喫した場合などには選手の疲労度なども考慮して、勝ちパターンのリリーバーをつぎ込んだりせず、主力打者も途中交代させるといった事実上の捨てゲームを作ることもある。しかし短期決戦は、たとえ序盤のビハインドでも早めに手を打ち、勝機を見いだしていく必要がある。

 起用する選手が、すべて思惑通りに働いてくれるとも限らない。指揮官の判断力と采配の妙が試合の局面を大きく左右してくるのは、監督就任からの3シーズンすべてでFSにコマを進めている工藤監督自身が最も痛感していることなのだろう。

「短期決戦はシーズンと違って長くない。短い中でしっかりと戦っていく。気持ちの充実、1球の集中力が大事。そういうところを見失わず、自分たちのやるべきことをやっていく。その中で、初戦はすごく大事。1勝のアドバンテージもある。ひとつ勝てば、かなり有利ですから」

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