夏の甲子園で一気に注目を集めたのが濱田太貴(明豊/外野手)だ。初戦(2回戦)の8回で試合をひっくり返す逆転2ランを放つと、続く3回戦でも一発と、サヨナラの四球を選ぶなど大活躍。体格はそれほどでもないが、抜群のリストワークでヘッドの走りが素晴らしく、チャンスでも自分のスイングを崩さないところが魅力だ。

 右打者では、他にも赤平竜太(青森山田/一塁手)、須田優真(聖光学院/一塁手)、成瀬和人(静岡/外野手)、谷口嘉紀(神戸国際大付/外野手)、谷合悠斗(明徳義塾/外野手)、山下竜哉(秀岳館/外野手)なども注目だ。

 一方の左打者も清宮、安田ほどのスケールはないが楽しみな選手は多い。ポテンシャルの高さを感じるのはやはり根尾昂(大阪桐蔭/外野手、投手)だ。確実性に課題は残るもののフルスイングの迫力は尋常でなく、昨年秋には広い大阪シティ信用金庫スタジアムの左中間に放り込んで見せた。投手としての将来性も捨てがたいが、野手なら吉田正尚(オリックス)のようになる可能性を秘めている。

 今年のセンバツで2本の満塁弾を放った山下航汰(健大高崎/一塁手)は、夏の群馬大会でも大会新記録となる5試合連続ホームランを放つ活躍を見せた。少し反動の大きいスイングだが、常に強く振れており、空振りでもゾクッとする迫力は根尾と双璧だ。

 夏の甲子園ベスト4の強力打線で4番を努めた片山昂星(東海大菅生/一塁手)も長距離打者の素質では負けていない。後ろが小さく前が大きい柔らかさのあるスイングで、広角に長打を放ち確実性が高いのも特長だ。

 その他では、夏の埼玉大会で4本塁打を放った蛭間拓哉(浦和学院/外野手)、甲子園で強打を見せた澤井廉(中京大中京/外野手)、林晃汰(智弁和歌山/三塁手)、内野裕太(波佐見/外野手)なども今後が楽しみだ。

 スラッガータイプではないが、忘れてはならない左打者が小園海斗(報徳学園/遊撃手)と藤原恭大(大阪桐蔭/外野手)の2人である。ともに2年生ながらU-18代表に選ばれていることからも分かるように、高レベルで三拍子揃っておりホームランを打つ力も十分に持っている。もちろん来年のドラフト有力候補だ。

 夏の甲子園が終わったこの時点でこれだけ2年生の名前がすらすら出てくる年も珍しい。また、リードオフマンタイプの楽しみな選手もまだまだいる。記念大会において主役候補である彼らの、秋のプレーにもぜひ注目してもらいたい。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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