一方で中村は、構えた時のバットの高さがまず特徴的であり、タイミングをとる動きも清宮に比べると少し大きいように見える。ただ、それでも動きに急なところがなく、ゆったりと左足を踏み出してボールを長く見ようとしているところに意識の高さを感じられる。そして卓越しているのがそのリストワークだ。中京大中京(愛知)戦での2本と、聖光学院(福島)戦でのホームランは高めの速いボールを打ったものだったが、スピードに負けずに右手で強烈に押し込んでいる様子がよく分かる。さらに秀岳館戦での一発は、内角のストレートに見事にヒジをたたんで対応し、改めてバットコントロールの良さを感じさせた。

 現段階では、パワーと飛距離に関してはやはり清宮に分があるように見える。しかし、スイングの軸が少しぶれてもリストでもっていける中村の対応力は清宮にはない長所だ。そして多くの打者が苦労する内角の速いボールに、清宮は無駄のないスイングと鋭い体の回転、中村はリストワークで対応できるということは今後の大きなアドバンテージと言えるだろう。プロの選手で例えるなら清宮は松中信彦(元ソフトバンク)、中村は坂本勇人巨人)にイメージが重なる。タイプも異なり、左右の違いもあるが、いずれも高校生とは思えないレベルの技術を持った打者であることは間違いない。

 9月1日に開幕した『第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ』。そして、その後のプロのステージで切磋琢磨し、ともに球界を代表するような選手に成長することを期待したい。(文・西尾典文)

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら