(3)安全を確保する


 心理カウンセラー・内田良子さんは「休ませる勇気こそ親の愛情表現です」と話します。「不登校ができた子どもは命を絶たずに済むから」です。本人にとって心から安心・安全だと思える場所はどこなのか。まずは安全な場所で気持ちを落ち着かせることが大事です。

 このほか「気持ちを尋ねる」、「心配しているなど自分の気持ちを伝える」なども基本的な対応の一つだと言われています。

■「9月1日」はなぜつらいのか

 昨年12月、大津市は子ども自身が回答した「いじめアンケート」の調査結果を発表しました。大津市は2011年に起きた大津いじめ事件以後、いじめ対策に力を入れており、アンケート結果は信頼できる数少ないデータの一つです。

 アンケート結果によると、9月は1年間のなかでもっとも「いじめ」が多い時期でした。それには9月特有の理由があります。

 前出の心理カウンセラー・内田良子さんによれば、9月は学校行事が多く、先生の管理が厳しくなる、部活がなくなりストレスの発散場がなくなるなどの理由から「いじめが起きやすくなる」そうです。

 そのいじめを受けてしまう側にとっても、9月というのは、ほかの月とはちがう意味合いを持ちます。というのも、学校がなくてホッとできる夏休みから、いきなりいじめのピークを迎える学校へ行くことになるからです。一度でも9月にいじめを受けたことがある人ならば「またあの時期がやってくる」と思うのがふつうです。

 以前、不登校経験者から9月1日は「ジェットコースターが落ちる前のような恐怖感があった」という話を聞きました。

■弱音を聞いてほしい

 さまざまに傷つけられて子どもは大人に相談しますが、残念ながら、その気持ちは軽視されることのほうが多いです。

 昨年、いじめに耐え切れず、先生に相談すると「ウソをつくな」と一喝された女子中学生がいました。彼女はそれが悔しくてつらくて、カミソリで自分の手首を切りました。すると親から「バカなことを」と怒られました。誰からも「なにがあったの?」とは聞かれなかったそうです。

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