大迫を欠く場合に大きく2つのプランが考えられる。同じ戦い方を別のFWでやり切るか、別の戦い方を選択するかということだ。攻撃の志向が変わるわけではないが、FWの生かし方をどうイメージするかで人選が変わってくる。

 オーストラリア戦では気候に慣れている国内組が重視されるとも言われる今回のメンバー。その中で早めに前線にボールを付け、そこに2列目の選手が絡む戦い方をするのであれば、興梠慎三が大迫に近い役割をこなせる選手だ。

 175cmという上背からはイメージしにくいが、縦のクサビに対して的確なポジションを取り、柔軟に全身を使ってボールを収めることができる。チャンスメーカーとしてのセンスも非凡だ。今季のJ1でここまで13得点を挙げており、ACLで3得点を決めていることも心強い。

 興梠のネックはハイボールの競り合いでオーストラリアのDFと真っ向から競り合えるタイプではないこと。またシビアな状況が予想されるセットプレーの守備を考えると、このポジションで高さのある選手を起用しないデメリットは小さくない。

 その点で金崎夢生はセットプレーを含めた守備面でも大迫と遜色ない働きが期待できる。前線のターゲットマンとしては大迫や興梠のような柔軟性は無いが、裏を狙う姿勢を見せながら相手DFに付かれても、強引に引っ張り込んで高い位置にポイントを作ることができる。

 オーストラリアのDFとはある種の“肉弾戦”を覚悟する必要があるが、金崎が相手に競り勝つことで、そこでボールを収めきることができなくても、結果的に周囲の味方がボールを拾って前向きに仕掛けられるはずだ。今季のJリーグではここまで6得点だが、金崎は重要な時間帯で勝負に直結するゴールが多い。

 金崎は昨年8月にクラブでの試合中の素行を理由に招集が見送られ、“代表追放”との報道も目に付いたが、その後は指揮官もたびたび候補の1人として名前を挙げている。新戦力より戦術を理解しているというメリットもある。大迫が万全であれば“二者択一”になるかもしれないが、今回は有力候補の1人としてリストアップされている可能性が高い。

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