「不登校にとって里帰りは、そばに寄るだけで胸が苦しくなる存在が勢揃いなのです」(石井志昂さん) (※写真はイメージ)
「不登校にとって里帰りは、そばに寄るだけで胸が苦しくなる存在が勢揃いなのです」(石井志昂さん) (※写真はイメージ)

 とうとうお盆休みに突入! 普段は学校に行っていない不登校の人たちにとって、夏休みの鬼門は里帰り。日本で唯一の不登校・ひきこもり専門紙「不登校新聞」編集長で、自身も不登校だった石井志昂さんは「解決策は一つだけ」と確信しているという。

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「あれっ? そうか、夏休みか」

 10代後半だったころ、平日の日中に走り回る小学生を見かけて、ふとそう思ったことがあります。

 不登校だった私にとって夏休みは、ふと気がつくもの。だって、ずっと学校がお休みですからね。「明日から夏休みです」という先生のお言葉とともに歓喜の声をあげる教室とは無縁です。

■親も子も反応は二分

 不登校にとって夏休みは、私のように「夏の風物詩」程度に捉えている人もいれば、街中に同級生が現れないかドキマギしている人もいます。

 夏休みが「気になる人」と「まったく気にならない人」、不登校当事者は両極端にわかれます。

 不登校の子を持つ親も同様です。

「いつになったら学校へ戻るんだろう」とため息をついている親たちの中には、夏休み中だけはその“任務”から解放され、ほっこり笑顔を取り戻す人もいます。

 逆に「9月からは登校を」と、子どもに塾を進めたり、生活習慣をムリにでも直そうとしたり、登校準備に全神経を注ぐ親もいます。

 そのため「不登校の夏休み」をひとまとめに語ることはできませんが、「里帰り」だけは事情がちがいます。

■抗戦もむなしく…

 多くの不登校にとって里帰りはロクな思い出がありません。当事者によれば「聞きたくない話のオンパレード」。

 里帰り中は「会社にだってイヤな奴はいっぱいいるんだ」と訓辞を垂れるお父さんがいる。

 有名進学校へ進んだ甥っ子の自慢話に花を咲かせ、当事者の自己否定感に追い打ちをかけるおばあちゃまがいる。

「学校へ行かなくても働けばいいんだ」と早朝から畑仕事を手伝わせようとするおじいちゃまがいる。

 不登校にとっては、そばに寄るだけで胸が苦しくなる存在が勢揃いなのです。

 そのため里帰りが近づくと、何事にもやる気がなくなり、食欲まで落ちる人がいます。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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