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見た目のインパクトが半端ない! “瓦パター”のすごい実力

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(左から)青緑釉で焼き上げた古代鬼面、定番商品の古代鬼面、オーダーメードで製作した、現代風の「本鬼面」のヘッド

(左から)青緑釉で焼き上げた古代鬼面、定番商品の古代鬼面、オーダーメードで製作した、現代風の「本鬼面」のヘッド

ボールを打つフェース面は研磨業者がつるつるに仕上げる

ボールを打つフェース面は研磨業者がつるつるに仕上げる

シャフトの曲げ具合は、ヘッドの形や重さによって調整しているという

シャフトの曲げ具合は、ヘッドの形や重さによって調整しているという

瓦パターを手に「夢はメジャー大会のウィニングパットで使ってもらうことです」と語る道上さん

瓦パターを手に「夢はメジャー大会のウィニングパットで使ってもらうことです」と語る道上さん

 ボールが当たると、「コーン」という澄んだ音が響いた。驚いたのは、当たりのソフトさだ。ヘッド部分は不思議な安定感があり、スイートスポットも広めで打ちやすい。そして、ヘッド部分の鬼と目が合うと、なぜか和む……。

 今、ゴルファーたちの間で注目を集めている、本州と四国を結ぶ兵庫県・淡路島特産の瓦を使った「瓦パター」は、その名の通り、ヘッド部分に鬼瓦がデザインされたゴルフクラブだ。

【写真】つるつるに仕上げられたフェース面!

 大きさは、幅約10センチ、奥行き約9センチ、厚み約2.5センチ。デザインは、悪霊や邪気を払うと言われている「古代鬼面」。近くで見ると、何とも言えない迫力がある。いったい、なぜこのような奇抜なデザインのパターを作ることになったのか。

 瓦パターを企画したのは、島内のゴルフ愛好者やレッスンプロ、瓦業者でつくる「KAWARA Putter Project(瓦パタープロジェクト)」のメンバーだ。事務局を務めるのは、瓦メーカー、大栄窯業(兵庫県南あわじ市)の専務で、自身もゴルフをたしなむ道上大輔さん(43)。

 きっかけは2016年7月、道上さんがゴルフ仲間のレッスンプロの男性から「地場産品の瓦でパターを作ってみいへんか」と相談を受けたことだった。道上さん自身も、瓦のソフトな質感は、パットに向いているのではと思っていたが、パターの素材は金属が主流。「面白そうだなとは思いましたが、実現するとは思いませんでした」。

 レッスンプロの男性から、大まかなデザイン案を見せてもらったところ、どれもオーソドックスなヘッドの形だった。「それでは瓦でやる意味がない。誰が見ても瓦だと思うデザインにしよう」と真剣にデザインを練った。そこで考えついたのが、レトロかつおしゃれな鬼瓦だったのだ。

「とりあえずやってみよう」と、プロジェクトのメンバーらで試作品を作り、ボールを打ってみると、うれしい発見があった。「思った以上にフィーリングが良く、違和感なく打てたのです」(道上さん)。それからは、メンバーらで形を三角にしたり、台形にしたり、直方体にしたりと、ヘッド部分だけでも数十個を試作。「グリーン上でも支障なく使えるようにしよう」とシャフトに取り付けて試打を繰り返し、微妙なデザインや、シャフトの角度といったバランスの調整を行った。

 道上さんによると、瓦パターの製作には、1本あたり平均で1カ月かかるという。ざっとした工程はこうだ。まずヘッド部分を瓦に使う土で成型し、瓦と同じ工程で焼き上げる。それを研磨業者がつるつるに磨き上げ、石材業者がロゴやネームなどを彫刻する。ヘッド部分ができると、クラブ開発も手掛けるレッスンプロが、それにシャフトを取り付けて曲げ具合などを調整し、塗装などを経て完成する。かかわっているのは、すべて島のプロフェッショナルたちだ。

 17年1月から販売を始めたところ、口コミなどで広がり、7月までに、首都圏を中心に、東北から鹿児島まで40本以上の注文があった。プレゼントやコンペの記念品などが主な用途だが、実際のプレーに使用するケースも多いという。

 使った人からは「フィーリングが柔らかく、速いグリーンに最適」などと好評で、「プレッシャーがかかるパットで、メンタル的に有利」という声も寄せられている。ゴルフの大会で、一緒にラウンドを回った他のプレーヤーが、瓦パターで好スコアを出したのを見て、注文してきた依頼者もいるという。

 ラインアップは、いぶし銀の古代鬼面と、青緑釉で焼き上げたターコイズ色の古代鬼面の2種類。定価は1本10万円(税別)だが、オーダーメードや交渉にも応じる。ヘッドのデザインや釉薬の色は、オーダーメードで変更が可能だ。道上さんによると、取引先へのプレゼント用に、ヘッドの色を金色、「金焼」にしてほしいという依頼もあり、制作して納品した。

 島特産の「淡路瓦」は、愛知県の「三州瓦」、島根県の「石州瓦」と並ぶ、日本を代表する瓦だが、瓦の生産量は、1995年の阪神淡路大震災以降、「耐震性に影響があるのでは」などと瓦屋根を敬遠する動きが広まり、減少の一途をたどっている。道上さんは「瓦パターも、瓦に興味を持ってもらう手段の一つなのです」と言う。

 道上さんの夢は、「メジャー大会で瓦パターを誰かに使ってもらうこと」だ。

「優勝がかかったパットで使ってもらい、瓦パターを手に喜ぶシーンが映像で流れたらうれしいですね」

 見た目のインパクトだけでなく、大事な局面でもソフトなインパクトで助けてくれそうな瓦パター。パッティングに悩んでいる方は、一度試してみてはいかがだろうか。 (ライター・南文枝)


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