今年度からは、給付型奨学金が設けられることになった。それ自体は大きな前進だけれども、その額は大きいとは言えないし、成績が要件に入っていることに大きな疑問を覚える。結局は、奇跡的に勉強を頑張れた人しか救われない。全ての人にチャンスを与えるという発想はできないものだろうか。

 今の政治は「国家」を強くすることには一生懸命だが、この社会で暮らす人々の生活は後回しのようだ。この間、安倍政権は特定秘密保護法や安保法制を、むちゃくちゃともいえる手段で、精力的に推し進めてきた。今度は共謀罪まで作ろうと意気込んでいるし、憲法改正への熱意だって相当なものだ。その熱量がなぜ、力なき人々の方へは向かないのだろうか。政権が代わらなければ、どうしようもないのではないかとすら思えてくる。

 もちろん「政権が代われば、社会が良くなる」なんて簡単に物事を考えているわけではない。それどころか実際のところ、政治家に対してそんなに期待もしていない。どんなに頭のいい人でも、今の社会状況を的確に捉え、最良の処方箋を用意することなどできるはずがない。

 そうだとしたら「最良の処方箋」は、多くの人が声を上げて、議論して、できる限り納得できるような形を目指して、叩き上げていくしかないのではないだろうか。そのために、誰でも政治にものを言っていくことは重要だろうし、その瞬間から社会は違う方へ、少しずつだが確かに動いていくと思う。生活には全然余裕がない。でもそんなことを思っているから、僕自身は政治に関わっている。(諏訪原健)

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諏訪原健

諏訪原健

諏訪原健(すわはら・たけし)/1992年、鹿児島県鹿屋市出身。筑波大学教育学類を経て、現在は筑波大学大学院人間総合科学研究科に在籍。専攻は教育社会学。2014年、SASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)に参加したことをきっかけに政治的な活動に関わるようになる。2015年にはSEALDsのメンバーとして活動した

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