オリックス・吉田正尚選手=2017年2月3日、藤田絢子撮影 (c)朝日新聞社
オリックス・吉田正尚選手=2017年2月3日、藤田絢子撮影 (c)朝日新聞社

 昨季最下位からの巻き返しを狙うオリックス。福良淳一監督の下、「野球まみれ」をスローガンに掲げて3年ぶりのAクラス返り咲きを狙う。

 チーム成績に相反して、戦力は豊富だ。投手ローテーションは金子千尋、西勇輝、ディクソンの三本柱を軸に、松葉貴大、山田修義、山﨑福也の左腕トリオ、新外国人のコーク、さらに3年目の東明大貴、2年目の近藤大亮、そしてルーキーの山岡泰輔らが争う形。昨季の2ケタ勝利は西(10勝12敗)だけだったが、昨季9勝11敗だったディクソン、同7勝9敗だった金子を筆頭に、それ以外の面々も十分に2ケタ投手になれる力を持っている。

 重要なのは“流れ”に乗れるかどうか。最後の最後までソフトバンクと優勝を争った2014年シーズンは、西が開幕8連勝で勢いを付け、エース・金子も16勝&防御率1.98で2冠&沢村賞を獲得した。2年前と同じように金子と西が、序盤から他球団とのエース対決に投げ勝つことができればチームは勢いに乗れる。他の若手にも相乗効果が生まれるはずだ。

 一方、リリーフ陣は吉田一将、海田智行、塚原頌平、岸田護、比嘉幹貴、佐藤達也、そして守護神の平野佳寿が控える。左腕が海田のみという不安はあるが、ウエスト、ヘルメンの新外国人のどちらか一人でも当たれば、一気にやり繰りもしやすくなる。問題はWBCに参戦する平野のコンディション。そしてしっかりとした役割分担を首脳陣が与えられるかだろう。

 より大きな変化が求められるのは打線の方だ。移籍加入組ながらチームの顔として不可欠な戦力であった糸井嘉男がFA阪神へ移籍。まずはこの糸井の穴をどう埋めるかが当面の課題になる。注目は2年目の吉田正尚。青山学院大からドラフト1位で入団した昨季は、故障による長期離脱を強いられながら、戦列復帰を果たした8月以降の42試合で10本塁打をマーク。11月に行われた台湾でのウインターリーグでは5割を超える異次元の打率で格の違いを見せ付け、春季キャンプでも最も期待と注目を集める打者となっている。

まずはこの若きスラッガーがクリーンアップに座り、ケガなくシーズンを全うすること。加えて、T-岡田、安達了一、西野真弘の生え抜き組、駿太、若月健矢、武田健吾ら若手たちが自覚を持ってチームを引っ張ることができるかどうか。昨季出遅れた安達が今季は万全の体調で開幕を迎えられそうなことは朗報。ここに中島宏之、小谷野栄一、モレル、そして新外国人のロメロが額面通りの働きをできれば、糸井の穴を考えるまでもなく、優勝争いは十分に可能だ。

 能力の高い選手は揃っている。噛み合えば優勝できる。それは毎年言われていること。チームとして明確な目標を定め、それに向けて士気を高められるかどうか。その意味では選手が“その気になる”ためのスタートダッシュが、他球団以上に重要になるだろう。