ママアスリートが増える兆しはパラスポーツ(障害者スポーツ)でも例外ではない。その一人が2004年アテネから北京、ロンドンと3大会に出場し、2020年東京五輪・パラリンピック招致活動の最終プレゼンターとしても脚光を浴びた元陸上・走り幅跳びの谷(旧姓:佐藤)真海(サントリー)は、昨年トライアスロンに転向。右足の膝下切断の障害を抱えつつ、2015年に出産した長男の育児に奮闘しながら、2020年東京パラリンピック出場を目指しトレーニングを積んでいる。

 その谷いわく「日本では妊娠中や産後のトレーニング法が確立されていないため、米国の文献を参考にするしかない状況。また海外では妊婦が運動をしたり、ベビーカーを押してジョギングしたりするのはごく当たり前の光景だが、日本だと危ないと言われてしまう」とママアスリートを取り巻く環境に苦言を呈している。

 こうした現状を変えるにはワーキングマザーに対する社会全体の意識を変える必要があるだろう。平たく言えば女性が働きやすい環境整備ということになるのだろうが、実際は子育て、仕事・競技、家事、夫婦関係、障害など要素は多岐にわたり一筋縄ではいかない。その中でスポーツの世界でも国の制度づくりや競技団体の適切な支援、スポーツ医科学・産婦人科といった医療領域の情報提供、そして最も身近な協力者である夫や家族の理解を女性たちが得やすいよう、多角的なサポートが求められている。(文・高樹ミナ)