麺を茹でる水を張る際に「計量カップを使っている」割合が最も多かったのも関東(51.2%)。一方で計量カップを使う割合が最も低く(33.6%)、「特に水の量ははからない」と解答した人が最も多かった(57.2%)のは沖縄で、アンケート担当者いわく「細かいことを気にしない大らかな地域性が裏付けられる結果」となった。

 また、「麺が早く茹で上がるように常に混ぜる」と解答したのが43.4%と全国で最も高かったのは関西。これについてアンケートの担当者は「少しでも早く食べたいという意識を裏付ける結果となり、行動が早いこと知られる地域性が現れる結果」と語る。

 とはいえ、実は近年のノンフライ袋麺を茹でる際は、茹で始めに麺を混ぜるのはタブーなのだという。これは「アルファ化」という現象が関係している。通常、人間は生の小麦粉や米に含まれているデンプンを消化することができない。分子結合が非常に強いためだ。そこで水とともに加熱することで、分子構造を壊す必要がある。これがアルファ化だ。

 旧来の袋麺は一度茹でた(アルファ化した)麺を油で揚げているのだが、マルちゃん正麺などの新世代ノンフライ袋麺は麺の美味しさを維持するため、十分なアルファ化をせずに乾燥させているため、調理する際、最初の1分間程度は湯の中に放置し、アルファ化を完了させる必要があるのだという。それをしないうちに混ぜてしまうと麺が切れたり、麺の表面が擦れて滑らかさが失われてしまう。ベストの状態で袋麺を楽しむためにも、ぜひ覚えておきたい豆知識だ。

 同調査では、食べ方についても聞いている。例えば、調理した鍋から直接麺をいただく「直食い」。しつけの厳しい家庭では行儀が悪いといわれることもある作法だが、男性では65.6%、女性では45.6%が経験有りとの解答。男性の割合が高いのは想像通りだが、20代女性は50.3%、30代女性は56.1%が直食い経験有りと、意外な“ずぼらさ”が判明。

 また、「袋麺についている麺とスープだけで食べる」という質問に対して、「とても当てはまる」と解答した人で最も多かったのは20代女性(38.5%)。最も低い割合である60代女性(14.3%)と比較して、2倍以上の高い割合となった。各世代を俯瞰しても、若い世代ほど袋麺をシンプルに食べる“素ラーメン派”が多い傾向が見られた。

 では、袋麺にはどんなトッピングが好まれているのだろうか。ラーメンのトッピングというと真っ先に連想されるのが煮玉子とチャーシューだが、前者は4位(2000名中39.9%が「よく食べる」と解答)、後者は5位(26.7%)とやや苦戦。一方で票を伸ばしたのが、もやし(57.0%、1位)、キャベツ(46.5%、2位)、長ネギ(44.4%、3位)の野菜“3種の神器”だ。これらが好まれた理由としてアンケート担当者は「ラーメン以外の料理にも活用できる使い勝手のよい野菜だから」と分析する。

 さらに、袋麺に投入する具材の好みには地域差もある。もやしは全国で人気がある一方で、長ネギをよく食べると解答した人は東日本では約50%に達するのに対し、西日本の各地域では総じて30%台と、大きな差があったのだ。またコーンの生産量がダントツで日本一の北海道で、9割以上の家庭が「コーンは袋麺には入れない」と解答している点も興味深い。

 こうして俯瞰してみると、袋麺というシンプルな食品にも実に多彩な楽しみ方があることがわかる。2015年10月にはマルちゃん製麺の累計出荷数が10億食に到達するなど、ますます加熱する袋麺市場。もちろん旧世代袋麺にも根強いファンがおり、チキンラーメン、出前一丁、チャルメラ、サッポロ一番のようなおなじみの顔ぶれもいまだ強い存在感を示す。家庭の食卓を彩る国民的常備食が今度どのような変遷を辿っていくのか。しばらくは目が離せない状況が続きそうだ。(ライター・小神野真弘)