スクープ撮影、それとも盗撮?(イメージ)
スクープ撮影、それとも盗撮?(イメージ)

 “線引き”は、一体どこにあるのだろうか?

 2016年7月27日、自宅療養中だった歌手・中森明菜(51)の隠し撮り写真を掲載した週刊誌『女性セブン』(小学館)に対し、中森がプライバシーの侵害に当たるとして計2200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。東京地裁は「芸能人であることが自宅で過ごす姿をのぞき見られることの違法性を軽減する理由にはならない」と判断し、同社とフリーカメラマンに計550万円の支払いを命じる判決が下された。

 判決によると、10年10月に芸能活動を休止した中森は東京都内のマンションで療養。同誌から依頼されたカメラマンが13年11月2日夜、マンション近くのアパート3階廊下から室内の中森を望遠レンズで撮影し、そのうち1枚が11月21日号に掲載された。

 小学館側は、中森が有名人であることや復帰への社会的関心が高いことを理由に「報道の自由」を主張していた。だが、裁判官は「撮影は違法で苦痛は甚大。歌手としてのイメージや芸能活動の再開に悪影響を与えた可能性も考えられる」と指摘。さらに、カメラマンがこの撮影で軽犯罪法違反(のぞき見)の略式命令を受けたことにも触れ、違法行為で撮影されたと認識しながら掲載した小学館に対して「コンプライアンス上の問題は大きい」と断じた。

 この話題は各メディアで取り上げられたが、ネット上では「それなら週刊誌のスクープ写真はすべてプライバシー侵害なのでは?」との疑問が相次いでいる。

 昨今は芸能人の熱愛や不倫騒動といった週刊誌のスクープ記事が世を騒がせているが、隠し撮りされたとしか思えない写真が多々ある。スクープでイメージが失墜し、芸能活動に支障をきたすケースも少なくない。であれば、中森のケースと同様にプライバシー侵害として扱われるのではないかと思えてくる。

「確かに『公人』呼ばれる、政治家やその立候補者などの場合は、私生活上のことであっても『公共の利害』に関するものと捉えられ、報道する側の社会的正当性が認められる場合があります。芸能人など場合も、この『公人』に準じているという考え方もあります」(法曹関係者)

 では、なぜ中森のケースでは出版社側の敗訴となったのだろうか。

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