【新事実2 歯周病の治療をすると、糖尿病も改善する】

 歯周病と糖尿病には密接なかかわりがあることは明らか。歯周病の人は糖尿病を併発していることが多く、また、糖尿病患者は歯周病が重症化しやすいこともわかっています。歯周病が悪化すると糖尿病も悪化する、それならば歯周病を治療すれば糖尿病が改善するのではないか――。それを明らかにした研究結果が、いくつか発表されています。

 岡山大学大学院でおこなわれた研究(岩本義博氏ら)もその一つ。歯周病と2型糖尿病を併発している患者に、歯周病の治療(スケーリング+歯周ポケットへ抗菌薬を注入)を実施し、治療前と後でHbA1c(血糖値の指標)を比較しました。

 その結果、治療後にはHbA1cが明らかに改善していたのです。また血糖値を下げるインスリン(ホルモンの一種)を作りにくくするTNF─α(腫瘍壊死因子)の血中濃度も、減少していました。
 糖尿病を治療中の人は、すぐに歯周病の治療も始めましょう。

<まとめ>
・歯周病の人は糖尿病を併発していることが多く、糖尿病患者は歯周病が重症化しやすい
・歯周病と糖尿病を併発している患者が歯周病の治療をすると、糖尿病が改善する

【新事実3 歯周病はアルツハイマー病を悪化させる!】

 2025年には全国で認知症を患う人の数は700万人を超えると予想され、国内外でさまざまな研究が進んでいます。そんな中、名古屋市立大大学院、国立長寿医療研究センター、愛知学院大学によるマウスの実験で「歯周病はアルツハイマー病を悪化させる」ことが明らかになりました。アルツハイマー病は、認知症のタイプの中で最も患者数が多く、6割以上を占めています。

 実験では、人工的にアルツハイマー病にかからせたマウスを用意。2つのグループに分けて一方を歯周病菌に感染させ、「アルツハイマー病のみ」のグループと、「アルツハイマー病+歯周病」のグループを作りました。両グループのマウスにまず球と三角錐を見せ、うち一つを違う形のものに置き換えて反応を調べたところ、「アルツハイマー病のみ」のグループは新しく置いた物体へ頻繁に近づく行動を見せたのに対し、「アルツハイマー病+歯周病」のグループの反応は変わりませんでした。「歯周病を合併したことでさらに認知機能が低下し、最初に見た物体の形を忘れ、新しい物体に興味を示さなかった」と考えられます。

<まとめ>
・マウスの実験で歯周病はアルツハイマー病を悪化させることが明らかに
・アルツハイマー病に歯周病を合併すると、さらに認知機能が低下する

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