「その時、私はちょうど日本橋で芝居をしていて。日本橋のホテルで二人で話し合ったんですが、私自身、途方に暮れたというか、舞台はやらなければならないという環境の中でどうしようか、と。麻央も途方に暮れていて。女性のほうがそういうところは気丈で、冷静に物事を見ている部分があるので、ショックは私より大きかったんじゃないかと思います。時が過ぎるのを忘れるような、時が過ぎたのを覚えています」



 懸念されるのは現在のがんの状態だが、それも決して芳しいとはいえないようだ。

「抗がん剤は人によって効いたり効かなかったりいろいろあるそうで、それを探りながらやっていて。よかったりよくなかったりを繰り返しながら。麻央は自分自身のことを理解していますから、前向きに病と闘っています」

 報道陣の質問に、はっきりした口調で返答していた海老蔵だったが、会見中には涙ぐむシーンがあった。麻央夫人の心情について聞かれたときのことだ。

「誰よりも一番、本人がつらいと思うんです。やはり元気になりたいという気持ちと、小さい子供のそばにいられない母親の気持ち、私には計り知れないつらさ、苦しさと闘っていると思うので……彼女もつらいときは私にそういう話もするんですが、気丈に明るく振る舞ってくれるので。彼女の本当の部分は今ここでは……」

 治療のため子供と会えない母親の心情を考えると、胸が詰まる思いだったのだろう。目元を赤らめながら言葉をつむいだ。

 また今回、こうした形で麻央夫人のがんが明らかになったことについては、本音も吐露した。

「本来はもうちょっと早くなってしまうところなんでしょうが……いま少し落ち着き始めているところなので、これ以上早く見つからなくてよかったなという本音と、できればずっと、(麻央が)元気になるまでは家族が辛抱して支え切りたかったなという思いと、公になってから少しほっとした部分、隠しきらなくていいという思い、その三面があります」

 さらに病が明らかになるまでの1年8カ月について「長いですし、これからもまだ続くわけですから。非常におのおのが忍耐のいる1年8カ月でしたし、おのおのが非常に悲しんだ1年8カ月だったんじゃないですかね」と話した海老蔵。自身の舞台にいそしみながら、麻央夫人の病状を隠し、支え、子供たちと生活するという日々は、海老蔵自身にとってもいかに大変なものであったかが垣間見えた。

 しかし最後には、麻央夫人を支え続ける強い、そして前向きな姿勢をみせた。

「麻央が治るまで全面的に支えますし、さっきもLINEで言ったんですけど、病気が治っても支え続けるよとかっこつけて言いましたし。1年8カ月つらかったですけど、いつか家族にとってはとってもいい時間だったといえる日を夢見て」
(文・横田 泉)