売れ行きはどうだったのか。英孝さんに言わせると「びっくりぽん!」。「びっくりぽんそろばん」はけっこうなお値段にもかかわらず約30丁、「パチパチはんそろばん」は約500丁売れたという。そろばん教室の先生や、朝ドラを見て「そろばんを習いたい!」と言った子どもの保護者からの注文が多いそうだ。

 中でもバカ売れなのが「パチパチはんホルダー」で、約2400個を販売。プラス税別150円で名前を入れられるのだが、新次郎役の「玉木宏」と入れてほしいという依頼が続々と寄せられている。「あさ」や「五代友厚」といった登場人物の名入れの希望も多いそうだ。16年2月からは、京都市にある広岡の実家跡に建つホテル、ルビノ京都堀川にも置いているが、すぐに売れてしまうという。

 昔から大事だと言われてきた「読み書きそろばん」だが、電卓の普及や少子化により、播州そろばんの生産量は最盛期、1960年代の年間360万丁から、現在では年間7万丁に減少。このためダイイチは、「1人でも多くの子どもに興味を持ってもらいたい」と玉をカラフルにした「播州カラーそろばん」や、振って音も楽しめる「べびそろ」、カエル型の可愛らしい「ケロそろ」を売り出す。

 また、そろばんの他に、そろばんの玉を使った時計やゲームなど数々のアイデア商品の開発にも取り組む。16年2月末には、そろばん型のお香「そろ香」を売り出した。火をつけても良いし、つるしておくだけでもラベンダーの香りがする、そろばん愛にあふれた商品だ。

 宮永さんは「少子化の今、そろばんが爆発的に売れるわけではないが、(時計やゲームといった)アイデア商品を作ることで玉やヒゴ竹を消費するし、職人の仕事も増える」と話す。「玉や枠をカラフルにすることで、地味なイメージから明るいイメージに持っていきたい」と前向きだ。

 朝ドラで注目され始めたそろばんグッズ。そろばん界の盛り上げにも、一役買ってほしいものだ。

(ライター・南文枝)