大阪市長選挙に当選した吉村洋文氏(c)朝日新聞社
大阪市長選挙に当選した吉村洋文氏(c)朝日新聞社

 YOSHIMURA,WHO?――11月22日の大阪市長選挙に当選した吉村洋文氏(40)を市役所の主として迎えることになった大阪市。 だが、市職員の間では、新市長・吉村氏がどんな人物であるのか、あまり知られていないようだ。「ただのシュとした男前、それしか印象にあらへんな!」(大阪市役所課長代理・40代女性)といった声さえ聞こえてくる。

 今回の大阪ダブル選では、知事・市長ともに橋下徹現大阪市長を旗頭とする「おおさか維新の会」が占めた。「大阪都構想」問題の再燃や生活保護受給率全国ワースト1問題など、課題山積の大阪市の舵取りを担う大阪市の新市長・吉村洋文氏とは、はたしてどんな人物なのか。

「いや、市長選に出やはったときから、当選可能性のある候補者を、うちら行政はネットで叩いたり、ウィキ(wikipedia)とかもみてたりしたんやけど、大阪市で市会議員してはったんやね。せやけどほとんど記憶にあらへんねん。あんな男前やったら覚えてるはずなんやけど。とんと記憶にあらへんわ」(前出の大阪市役所課長代理)

 現在40歳、大阪府では名門として通る府立生野高校から九州大学法学部に進み、司法試験合格。その後、政治を志し、大阪市議会議員、衆院議員を経て、今回、大阪市長に当選という経歴は、まさに絵に描いたようなエリートである。

 だが、市職員たちの間では、「ええっ、うちで市議やったん? 知らなんだわ……。ジャニーズ出身かと思うてたわ」(大阪市役所職員・20代女性)と、そのハンサムぶりだけがもっぱらの評判だ。

 政策面では橋下徹市長の後継者ということもあり、大阪市役所では新市長誕生により行政に大きな変化はないと市職員たちはみている。

「大阪都構想賛成でネット上で話題になって今回の市長選出馬の噂もあった“たむけん”(タレントのたむらけんじさん)が当選したほうがインパクトあったんとちゃうか」(大阪市区役所課長・40代男性)

 だが新市長誕生にインパクトを持って受け止めた大阪市職員もいる。

「これから忙しなる思うて、吉村新市長が過去受けたマスコミのインタビューとかも調べたんやけど、ほとんどあらへん。wiki以外、何の情報もない政治家て珍しいわ。橋下現市長の後継者やから市役所内の禁煙にはうるさそうやね」(別の大阪市役所職員)

 大阪市職員にとっては“天敵”ともいえた橋下市長だが、その後継者である吉村新市長には、そうした風当たりはほとんど見受けられない。

 市職員たちにとって“厳しい上司”だった橋下市長が市役所を去り、“おとなしそうな上司”である吉村新市長誕生で、どこかほっとした空気が、今、大阪市役所には流れているという。これを追い風とするか向かい風とするかは、吉村新市長の手腕にかかっている。

(フリーランス・ライター・秋山謙一郎)